南倉(イナGO)
あ、と思った時には割れていた。
それはもう粉々に。
鮮やかな程美しい破片になった赤いカップは、味気ない蛍光灯の光を受けて煌めいていた。
ぽたり、また輝きが増す。
丸い光がいくつか、それが一つに繋がり、どんどん大きくなっていく。
ぽたり、ぽたり。
きらり、きらり。
出てきては煌めく。
ああ、ああ、こんなにも綺麗なのに、どうして手をすり抜けていったのか。
元俺の恋人だったあんたが使っていた元カップは、今はもう塩水の受け皿。
後五分程泣いたらゴミ箱に捨てよう。掃除機で吸って、欠片も残さないように。
嚮Nのカケラを越えて
11.1/9
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