貴方の瞳に酔う



こんなに暗くなってから薬を取りに行ったのが悪かった。酒に酔い、ふらふらと店から出てきたこの薬屋は、鬼灯を見つけるや否や手をとり店のなかに引き込んだ。

鬼灯の前には酒の入った枡が一つ。

「鬼灯のこと好きだよ。」

いつも通りの戯言。

「…私は嫌いです。」

いつも通りのそっけない返事。次には決まって、

「嘘つき」

と、口角をあげて鬼灯を見つめる似たような顔の神獣。ああ、今日も流される。見つめられると悪態も暴言もでてこない。鬼灯の後ろの壁に手をついて、唇が触れるか触れないかの距離でもう一度、

「好きだよ、鬼灯」

またいつも通りの答えを返そうと開いた唇は、声を出す暇なく塞がれた。





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