部屋から、桃太郎を呼ぶ声がする。
「桃たろぉくーん…ちょっと今日店出れない…」
「また二日酔いですか!白澤様最近飲み過ぎですよー」
白澤は、説教は勘弁とだけ呟くと、布団に潜ってしまった。
最近ずっとこれだ。
女の子を連れ込んで来るわけじゃなく、かといってそういう店に行っているわけじゃない。
「俺と居たくないのかな…」
桃太郎はそう呟いて、深いため息をついた。
「はあ…」
女の子に会いたい。
でも店に行ったら行ったで、そんな気分でもなくなる。
「僕、は…」
どうしたんだろう。
ちょっと気まぐれで桃タロー君に抱かれてみた。
僕にとっては気まぐれ、でも桃タロー君にとっては…
あれから、まともに話をしただろうか。
「はあ…」
ため息しかでない。
僕はどうしたんだろう。
僕はどうすればいいんだろう…
「…僕は他人を愛せない」
白澤の声は誰に届くでもなく、静かな部屋に消えた。
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