スキ、キライ、……すき。


「ん……っ」

甘い声をあげて僕のキスを受け入れる彼を見て、ふっと笑みが零れた。

「ふふ……キスだけで感じちゃいましたか?」

試す様な口調で尋ねると、彼は首をふるふると横に振った。

「へんたい、はなせ、バカいず……っん」

全く、素直じゃない人だ。

こうやって唇を奪ってしまえば、簡単に反応してしまう癖に。
僕は彼の耳元で優しく囁く。

「好きですよ……」

彼は一瞬だけ頬を緩ませるが、またすぐさま暴言を吐き始める。

「うるせえ、は、離れろ……っ」
「何でです? こんなにあなたを愛しいと思うのに……」

嘘、だ。

僕は、あなたが嫌いなんです。

この捻くれっぷりは心底腹立たしく感じるし、何も知らない癖して全ての鍵を簡単に握ったまま持っている彼は憎らしい。

そして、何時も僕を戸惑わせ、苛立たせ、僕の心を奪う彼。

あなたなんて嫌い、大嫌いだ。

暫くそんな考えに捕われている僕に気付いたのか、彼は訝しげに視線を向けてくる。

「こいずみ……?」

ああ、そんな可愛い声で呼ばないで。

僕をこれ以上おかしくさせないで。

狂おしい程、あなたを想う。

悔しい。
悔しいから、本日何回目か解からないキスをする。

深く、心まで奪う様に。

「……あなたなんて、僕の事しか考えられなくなってしまえばいいんです」

心の内で言ったつもりが、ぽろりと言葉になってしまったみたいだ。
彼は顔を真っ赤にさせ、ばか、と漏らす。

「もうとっくにそうなってる……」

全く、なんて人だ。

僕の心を掴んで放さない。

それは、苦しくて、狂おしい程に、僕を壊していくのに。

たった一言、それだけで。

「……すきだ、こいずみ」

彼は僕を捕らえてしまう。

なら、僕だって。

離してなんかやらない。苦しめばいい、僕で一杯になってしまえばいい。
あなたが悪いのですからね?

「キョンくん……好きです」

苦しくて、憎らしい。
でも、どうやら僕は彼がいないとダメみたいだ。








__________

2008.05.08

何時も古泉は好き好きアピールしまくりなので(笑)
敢えて逆の古泉を書いてみた。
結局はキョンが大好きすぎて仕方が無い古泉でした。






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