交わる線 3
リンリンリン……リンリンリン……リンリ、
『仕事だ、タンダ』
「ターゲットは」
『狗だ。西の方のシマ荒らしてやがる。殺さなくてもいいが腕の二本や三本は取ってこい』
「了解」
ピッ、プー……プー……
通話の切れた煤けた電話機を置いて瓦礫から飛び降りる。
くるくると手の中でナイフを回し感覚を確かめる。
確かな高揚感に胸が高まる。にやけそうになる口元を抑えてかけ直す。
『伝えたはずだが?』
「特徴聞いてなかった。」
『…行ったらわかる。西に狗はヤツしかいない。』
「そう。錬金は」
『使わない』
プー……プー……
連絡用、と書かれた場所に置き直して次こそ向かう。
黒のスニーカーに灰色のトレーナーにジーンズ。迷子の一般の子供に見えるだろう、オレは背丈も低いし。
フッ、とナイフを消してシェリング兄弟の元へ向かう。
時折後を付けられるが顔を見せればまたかという顔で去っていく。まあ確かにいいカモだろう。暗殺のためなら服も貸してくれるということはここら辺の常識だ。暗殺やってるのはオレしかいないが。
「あ、ユイシキ!しごと?」
「ユイにー!エドはきらきら売りに行ったよ!」
ジャックとミラがにこにことしながら駆け寄ってくる。
エドというのはエドァルドのあだ名だ。他にもアル、アルドというのがある。この世界のどっかの兄弟みたいだ。
茶色い頭を撫でて目線を合わせる。
「じゃあエドァルドに伝えておいてくれ。3日くらい帰らないこと、ツボの中にお金が入っていること、好きに使っていいこと。わかったか?」
「うん!ジャックと覚える!」
「うん!ミラと覚える!」
「よし、いい子だね。行ってくるよ」
「いってらっしゃい!」
ブンブンと手を振り見送ってくれる双子にひらひらと手を振り後にする。
_さて、仕事だ。