『聞こえるかっ!?全員、中央ブロックに集まれ!繰り返す、死にたくなければ真ん中に集まるんだ!時間がない!急げ!』
アレルヤの声が重力ブロック内に設置されたスピーカーから流れる。混乱に陥る重力ブロック内。
アレルヤは何とかしなければと言うその一心でガンダムを走らせる。
『…――聞こえるか、ガンダムのパイロット!』
アレルヤの乗るキュリオスに緊急用回線からの通信が響いた。
ティエレン宇宙型のパイロット、セルゲイ・スミルノフの声。
『ガンダムの推進力をもってしても現状維持が限界だ。まもなくこのブロックは限界離脱領域に入る。……ここまでだ、離れろ』
『フッ、できないね!』
アレルヤは叫んだ。
『ソレスタルビーイングに作戦の失敗は許されない』
――それに。
『ガンダムマイスターは独りじゃないっ!』

刹那、まばゆい閃光が視界の端を駆け抜けた。
白熱した光が、重力ブロック同士をつなぎとめる連結部分を貫き、三つのうちの一つがゆっくりと中央ブロックから離れていく。
『…――さすがだ…ロックオン・ストラトス…』
アレルヤは呟いた。







『GN粒子、高濃度圧縮中。チャージ完了マデ20、19、18…』
ロックオンが乗るガンダムデュナメスのコックピットにて、専用ポッドに収まった独立AI小型マシン・ハロが電子音声でアナウンスする。
今頃ロックオンは精密射撃用スコープシステムを構えているだろう、とベリアルのコックピットで漠然と思ったおれ。
白い雲が視界を覆う。
(…―――、!!)
突如、瞼の裏に甦る光景。
その、腹が立つ程に澄んだ純白に、頭痛に似た何かが襲い掛かる。
真っ白な世界に漂う、真っ黒なおれ。
指先が赤みを帯びる。
どうして、こんな事になったんだ。
何処で、間違えた。

『…――世界なんて、ぶっ壊れてしまえばいい』

この世界に神が存在するならば、神は不平等だ。
傷付ける人間、傷付く人間。
騙す人間、騙される人間。
苦しむのは何時も弱くて何も知らない子供ばかりだった。
傷付くだけの世界ならば。
全てを壊して終おう。

『…――違う世界でなら…、おれ達は素直に愛し合えたのに…!!』

神も、世界も、傷付く人間も、傷付ける人間も、全部消して終おう。
何も無くなった世界でおれが神に成る。
そして全てを背負っておれも灰に成る。

『…――お前の居なくなった世界は、痛みしか感じない。』

「刹那、惺」とロックオンが声を張る。おれはその声に現実に引き戻された。
「発射方向の軸線上に雲がかかりやがった。粒子の拡散で火力と精度が落ちる。…――切り裂け、刹那!惺!」
「……………。」
無言のおれ。「了解」とだけ返す刹那。
(どうして、)
上昇するガンダムエクシア。おれのガンダムベリアルは固まったまま動けない。
(人命救助など、)
動かないベリアルに、通信を介して刹那が此方を見た。バチッと目が合う。
その目が、怖いくらいにおれの胸を突き刺す。
あの日と同じ。
あの日の、おれと、同じ瞳。

『どうしてなんだよ惺――ッッ!!!!!!』


世界をまだ捨て切れなかったあの瞳。
そして、世界に絶望したあの瞳。
(どうして、おれは、)
無意識にエクシアを追うベリアル。身体が勝手に動いた。雲を切り裂き、宙を舞う。
その向こうに、青空――宇宙が覗いた。
腹が立つくらい、綺麗な青空。
その向こうに、答えを求めるかのように、必死に手を伸ばした。
(おれは――…)


『…―――狙い撃つぜ!』

重力ブロックの連結部分が弾け飛ぶ。
落下ルートを計測していたグラフィックスが今は安定軌道ルートを表示している。
「…はぁ…」
我に返ったおれは、コックピットの中で、思わず声を出して溜息をついた。
頭の中には、あの呪いの言葉が響き渡る。
(…人間は殲滅されるべき存在なのに…)
―――人命救助だなんて。おれはどうしてしまったのだろう。

両手で頭を抱えた。


「…人間達の罪を赦すな。世界を赦すな。」


…―――おれの犯した罪のように。




2012.11.27修正



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