「はじめましてだな、ガンダム!」

コックピットの中で叫ぶ人物。
そして、戦っていた刹那も思わず「何者だ!?」と叫び返す程の操縦技術の持ち主。
「グラハム・エーカー、キミの存在に心奪われた男だッ!」
――惺がガンダムベリアルに乗ってやって来たのは、ちょうどその時だった。
(なんだ…フラッグか…?)
嫌な予感に、呼び寄せられるようにやって来た惺は、エクシアを発見した。しかし、そこには見慣れないフラッグもいる。
(どうすればいいか…)
二機の間に下手に割り込めない。折角やって来たと言うのにベリアルは空中を徨彷う。
「……………っ」
ソレスタルビーイングが活動を始めてから度々感じていた、何も出来ない苛々に、惺は両手を握りしめる。
まだ口の中に残っていた飴玉が急かすかのように惺の気持ちに拍車をかける。
「………、」
ガリッと飴玉をかみ砕く。
自分でもおかしいと分かっている。こんなに激しい破壊衝動、どうかしてる。すると、フラッグがベリアルを捉えた。
「ほぅ!もう一機いたのか!ガンダム!」
「………………。」
コックピットの中で対照的な反応を示す二人。惺は溜息をついた。
(もう、勝負はついたらしい…)
惺の溜息を合図にするかのように、ビームサーベルを取り出すエクシア。
(………つまらない………)
今回は出番がないと判断した惺は、ゆっくりと後退し始める。
「待て!ガンダム!」
グラハムの叫びは当然惺には聞こえない。
「……………………」
(戻る、か…)
二機を背に、飛び立つベリアル。このグラハム・エーカーとの出会いが、後に惺を狂わせるとも知らず。

口内は、まだ微かに苺の味がした。









それからしばらくした後、大型輸送機に戻ったグラハムはカタギリと話をしていた。
カタギリは嘆息まじりで言った。
「いやはや、本当に予測不可能な人だよ、キミは」
「ライフルとブレイドを失った。始末書ものだな」
グラハムはカタギリにそう返した。
「…それにしても若かったな、ソレスタルビーイングのパイロットは」
「話したのかい?」
「まさか。モビルスーツの動きに感情が乗っていたのさ」
(それに…あのもう一機のガンダムも…)
戦いこそしなかったが、あのガンダムがどこか引っ掛かる。最初のガンダムは感情を読み取れた。しかし、後に現れたガンダムには、感情らしきものが一切読み取れなかった。
(あのガンダムともお手合わせ願いたいものだ…)


『ガンダム、ロストしました』
「フラれたな」




2012.10.07修正



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