――人間は大嫌い。

果てしなく印象が悪いが、これはおれの口癖だ。
周りの人間から見れば、おれは全然喋らなくて冷酷に見えると自覚している。実際そうだし否定はしない。だが、そもそも、おれは人間を憎んでいるのに生温い馴れ合いなど要るのだろうか。答えは必然的に見えてくる。
おれはただひとつの目的の為だけに存在している。それ以外のものを気にかける必要はない。
ただ、その目的の達成の為に、おれは生きていればいいのだ。
ゆっくりとガンダムの操縦桿を力強く握って引く。途端に身体全体にかかる重力。
しかしそんなのは気にせずに、エクシアの傍まで飛び立つ。
「………………、」
周りには新たなガンダムの出現に、次々とおれに群がり攻撃を開始してくる機体。興奮に似た何かを感じておれの心臓はバクバクと鳴り響く。
(やっと、だ)
終焉を導く第一歩。
もはや何が何だか分からないくらいの昂揚。ビームサーベルを勢いよく引き抜くおれのガンダム。それを何処か他人事のように見詰めた。
何時ものポーカーフェイスを崩し、破壊活動を続けるおれ。その姿はさぞ異様だっただろう。エクシアすら視界には入って来ない。
ドォォンと、激しい音をたてて次々と爆発していくAEUの機体。
それと共に、満面の笑みが浮かび上がる。隠しきれない程の胸の高鳴り。それはまるで幼い子供のような残酷な笑み。「見て!シーチキン!」と笑いながら蜻蛉の羽根を持って引き裂く子供のような。
無垢で残酷な刃の切っ先。

「人間なんか滅びてしまえ」

高ぶる気持ちを抑え切れず、思わず口に出した惺。
ドォォンとまた爆破音。
(次は…っ!)
と、新たな敵を求めた刹那、おれのガンダムのすぐ傍を、鋭い閃光が駆け抜けた。
「…………ッ」
それが誰の仕業なのか言われなくても直ぐに分かった。
(ロックオン・ストラトスめ…)
驚き、怒り、失望、
空の彼方に消え行く閃光に、たくさんの感情が煮え滾る。そして興が削がれたおれは再びポーカーフェイスへと戻った。
下にはベリアルに向けてライフルを構えているデュナメスが見える。

「惺!おまえはやり過ぎだ!これ以上やったら撃つからな!」とロックオンの怒ったような、でも焦ったような声が回線を通して聞こえた。
「…………………。」
(ちっ、)
内心だけで舌打ちする。
そうやって彼は悉くおれの邪魔をする。
きっと分かってやっているのだろう。そこが憎くて堪らない。
とりあえずその場を離れる。
「よし、いい子だ惺」
「ガキ扱いするな」
思わず返してしまった。
ロックオンはおれが話してくれた事が嬉しいのか、モニターの向こうでニッコリ微笑んだ。
(腹が立つんだよ…、そう言うところ、全部が…)
ゆっくりと眉間に皺を寄せた。
(……。)
瞼を閉じていても見える、彼の笑顔。
何処か儚げにも見えるそれは、何故かズキズキとおれの心を突き刺す。復讐など止めてくれ、と言いたげに。
(お前が望んでいなくても、おれは望んでいる)
立ちはだかるのはお前だけ。
邪魔なのはお前だけ。
(だから、早く退いてくれ)

入りかけた視界から、

入りかけたおれの心から。




2012.09.27修正



- 6 -


[*前] | [次#]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -