走馬灯ってやつかな。
今になって、こんな事を思い出すなんて。



セブンスターズだか何だか知らないけど、こっちからしたら本当にどうでも良い事だった。
今朝、外国からスパイ行動を終えて帰って来て、今日は一日中ダラダラ過ごして疲れを取る予定だったのに。インフルエンザなんかにかかった義父の代わりに誕生日パーティーに出席して。その結果が、陰口や噂話の標的だなんで本当に笑えない。無性に何かを殴りつけたい。
こっちは吐き気を催してトイレにまで駆け込んだんだぞ、と内心は大荒れだった。
本当はホールになんか戻りたくないけど、主催者に帰ると一言伝えておくべきか、と、妙に律儀な私が出てきてしまい、頑張ってホールに戻った。
仕事の疲れが取れてないからさっさと終わらせよう。
ホールに戻ると、何やら先程と比べて騒がしい。
(なんだろ…階段の踊り場にめちゃくちゃ女が集まってる…)
自分には全く関係無いからだろうか。あそこ、香水臭そうだな、と呑気に思う。

ぐるぐると見回して主催者を探すが、トイレに駆け込む前まで居座っていた場所に、主催者の姿が見えない。何故だ。
(ああもう!イライラする!!)
近くで「ほら…、あれがナルバエスの…」とコソコソ言っているマダムに「そこ、聞こえてるから」とガンを飛ばす。「やだあ…これだから孤児院出身は…」と言って逃げられた。あのババア忘れないぞ。私が特殊工作員だって知ったら失神するだろうな。いつか報復してやる…、と物騒な事を考えていた時だった。

ドン、と、背中に誰かがぶつかる。同時に、物凄く香水の混じり合った酷い匂いがした。瞬時に顔を顰める。
『ちょっと、ちゃんと前見て歩きなさいよ』
ぶつかって来たその人を睨み上げると、そいつは一瞬だけ目を見開いた。シャンデリアの光が、そいつの金髪に反射する。眩しい。
「ああ、すまなかった」と、男は謝ってこちらを凝視する。なに、君も孤児院出身ってバカにしてるの、と更に人相が悪くなっていくのが分かった。
そして、タイミング悪く、友人だろうか、「…おい、マクギリス!そこで何をして…!」と、もう一人、男がやって来た。
(帰りたいのに、)
『お前、フラッと女の集団から逃げたと思ったら、こんなとこで別の女を口説いてたのか?』
やって来るなりそう言った男に、イライラしながら答えたのは私。
『あのねえ、違うから。この人がぶつかって来て注意してただけだから』
毛先の遊んでいる青い髪。昔、しつこく孤児院にやって来たお坊ちゃん達を思い出して、更にムカムカしてきた。何で、今、そんな事を。
『お前…』
青い髪が私をジッと見詰めて言葉を漏らす。隣の金髪も「私もそう思ったよ、ガエリオ」と苦笑した。
『なに?何も無いなら私帰るから』
本当、腹が立って仕方ない。
明日だって任務があるのに。
『ちょっと待て』
『はあ?まだなんかあるの?』
『お前、シンだろ?』
イラッときた。君達もさっきのババアと同類か。
『ええ、そうですけど。孤児院出身でナルバエスの養子のシンですけど』
鋭く睨み上げると、何故か二人は笑う。そして「やっとだな」と呟く。
『俺達の事、忘れたのか?』
『はあ?』
私は何かの詐欺にあっているのだろうか。
こんな知り合い、私には居ないんですけど。
まあ、小さい頃に三人程、しつこい奴らは居たけど、彼らとは、私が自ら繋がりを絶った。もう会うはずがない。

会うはずが…、

『…は…?嘘でしょ……』




2016.05.07

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