すー、すー、と寝息が聞こえる。
腕の中で眠るこの存在が果てしなく愛しい。
露出している白い肌が淫靡な気分を助長させる。
(あー、やべ。我慢きかねー)
左肩から走る傷痕にするすると触れる。擽ったいのか「んぅ…、」と唇から吐息が洩れる。
耐えきれずに、その鎖骨に舌を這わせた。
「ん…っ、」
流石にまずかったのか、ぐるんと寝返りをうち、背中を向けた惺。背中も白くて綺麗だ。
(俺、幸せだな…)
先程の情事を思い出す。
自分しか知らない彼女の顔。
普段は無口で無愛想な彼女が、繋がった瞬間だけは素直になる。
背中に食い込む爪まで愛しい。
抑揚の無い声がその瞬間だけは色を放つ。一生懸命しがみついて喘ぐその姿。流れる涙。甘い香り。
(全部、俺しか知らない)
「惺…」
ゆっくりと彼女の腰に抱き着く。
「愛してる」

「…知ってる」

愛しい声が返ってきた。





2012.03.28

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