武力介入を終えて、合流ポイントに辿り着いた時には、もう星が煌々と存在を示していた。
ガンダムから静かに降り立った俺は、少し前に着いていた未だにパイロットスーツを纏ったままの彼女と目が合った。
彼女の瞳は、星々に飲み込まれる事無く、確かに其処に輝きを放っていた。
(きれいだ、)
何もかも忘れて引き込まれそうになった。
純粋に、そう思った。
同時に、俺はその奥に潜む悲哀に気付いてしまった。

彼女は夜空を見上げ、哀しく微笑んだ。

「世界は…こんなにも醜い」

そんな科白と共に。


…――分かる。
武力介入を終えた後は、決まって哀しくなる。
俺達は、こんなにもガンダムになろうともがいているのに、世界の絶望を見せ付けられた気がして。

不意に彼女が振り向いた。

「神は…こんなおれ達を嘲笑っているんだろうな」


「…この世界に…神なんていない。」


「…そうか。」

彼女の科白を真っ向から否定した。


「なら、さ…」

彼女が続きを紡ぐ。同時に、共鳴するかのように、ざあ、と、風が俺達を包み込んだ。そして、ふわり、と、彼女の髪の毛を拐って逃げて行く。
その流れるような光景を不覚にも見とれるような形でじっと捉えていた。

彼女の唇が開いた。



「おれが、神に成る。」



―――風が、止んだ。




「皆が…刹那が…、これ以上、苦しまないように……、争いの無い、真っ白な世界を……、おれが、創る。」


その真っ直ぐな瞳に魅せられて。



「哀しみは、これ以上要らない。」


(嗚呼…、)

――思えば、甘えていたのかもしれない。
自分と似たような瞳を宿した彼女に、自分と似たような闇を抱えた彼女に。


助けてあげたいと思うのと同時に、助けて欲しいと願った。


「お前は…強いな」
「強くないさ。ただ、強くありたいとは思っている」

(十分強いじゃないか…)
自分が神に成る、なんて、決意の薄い俺には言い切れない。
ガンダムにだってすら、手が届いてないのに。


「俺も…強く、ありたい…」



俺の科白に彼女はゆっくり微笑んだ。



(こんなにも、焦がれた)

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