初めて会った時には既に手遅れだったのかもしれない。

正式にソレスタルビーイングのガンダムマイスターになる前、スメラギ・李・ノリエガとの会話。
「マイスターに、貴方に似てる子がいるの」
勝手に語り始めるスメラギを傍観しつつ、耳はしっかり傾ける。
「喋らないし無愛想。無表情でロボットみたいな子」
苦笑いを浮かべるスメラギ。それだけ聞けば物凄く酷い人間だ。密かにそう思った。
「でもね、」
スメラギは続けた。
「凄く、熱い瞳をしてる。目的の為なら命だって惜しまない、そんな瞳」
「………命だって惜しまない…」
思わず呟いた。自分だってそれくらいの覚悟はしている。それのどこが――…
スメラギは俺の考えている事はお見通しだったらしい。静かに微笑むと、
「会えば分かるわ」
それだけ告げた。






「―――刹那?」

俺の名を呼ぶ、抑揚の無い声で、過去から現在に舞い戻った。
呼んだ本人は、ぼーっとしていた俺に疑問を抱いたのか、僅かに心配そうにしながら「どうした?」と問うた。
「お前に、初めて会った時の事を…思い出していた」
惺は、一瞬目を丸くすると、またいつもの無表情に戻った。
「どうしてそんなこと…」
声が僅かに小さくなる。多分、あの時の発言や態度を覚えていて、気まずさを感じているのだろう。

ロックオン、アレルヤ、ティエリアが、仲間として一緒に頑張ろう、と言ってくれた中、唯一降り注いだ拒絶―――それを紡いだのが惺だった。
一瞬見ただけで分かった。この人物が、スメラギが言っていた人間だと。
纏う雰囲気が冷たく、しかし瞳はどこか熱い何かを宿している――…

「お前は、おれと同じ瞳をしている」

ぎろり、と鋭い視線が胸を突き刺して、


「人殺しの、瞳、だ」


それが、憎悪だと気付いたのは、その科白を聞いて直ぐだった。

「…あの時は……悪かったな」
前髪を掻き上げて反省したように謝る。そんな彼女に俺は「別に気にしていない」と返した。
気にしてはいないが、ただ、
「あの時、落ちたのは確かだな」
「は?」
「いや、何でもない」

あの時、俺は彼女の瞳を見て確かに安心したのだ。俺と、同じだ、と。独りではない、と。
彼女の過去を知っていた訳ではない。だが彼女の瞳を見て全て分かった。
同じ、人殺しの瞳だったから。

成る程、熱い瞳をしてる理由も頷ける。相当辛い過去を背負っているのだろう――その瞳を見て思った。

「惺、」
俺はある事を思い出し、口を開いた。
ずっと言おうと思っていたこと。








「お前の瞳は、俺と同じ人殺しの瞳だ」



惺の瞳を見詰めた。




「優しい、人殺しの、瞳」



惺は静かに微笑んだ。



「お前もな」








(独りじゃないから)
2011.10.09

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