扇動者
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「あれは」
調査任務の帰り。
エントランスへ戻る途中、彼女を見かけた。
昨日入隊したばかりの水色の少女の名前は――そう、
「メーア……だったっけ」
少女は依頼掲示板から1枚、紙を剥がすと隣にある書類にペンを走らせた。
これを見るに、今から初任務といったところだろうか。
ペンを動かす手を止めると、メーアは一度頷いてエントランスを後にした。
その様子を遠目から見ていた青年、ハインはメーアが出発したのを見届けて。
エントランスにある、ついさっき彼女が書き留めた任務遂行表を確認した。
「へぇ、配達任務か。うん、最初だから丁度良いね」
と、頷きかけて、しかしハインは途中でそれをやめた。
任務遂行表と一緒に留めてあった依頼書が目に留まったからだ。
「……これって」
嫌な予感が脳裏をよぎる。
ハインは急いで自室に戻り、壁に立てかけてあった自分の相棒を掴んだ。
それから息をつく間もなく、ギルドを飛び出した。
……どうか、嫌な予感が当たりませんように。
待ってて、メーア。
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