扇動者
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長い小径を歩き続けること約20分、いよいよ目的地が見えてきた。
オレンジ色の暖かな屋根にクリーム色の壁。それを囲む門には『ひだまり園』と書いてあった。
ひだまり園は、両親がいない者を預かって育てている所謂孤児院である。
両親を亡くした子どももいれば、勝手な理由により捨てられた子もいる。ここには心に何かしらの傷を受けた子たちが集まっているのだ。
今回の配達任務は、そんな孤児院で1人で働いている女性からであった。
門の脇にあったベルを鳴らすと、建物の中から依頼主と思われる若い女性が現れる。
こちらを見て一瞬驚いたように目を丸くしたように見えたが、それもほどほどにすぐに女性は近くへ駆け寄ってきて門を開いた。
「よくおいでくださいました…北極星の方ですね?」
背丈はメーアより少し低く、若干上目がちに尋ねてくる。
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