▼Adventure

「燐、着いたぞ」
 
 
燐は保育園に近づく度に少しずつ足を遅めた。
 
きっと緊張しているのだろう。
 
 
「…やっぱりいきたくない」
 
 
勝呂の制服を掴んで俯いてしまった燐に呆れて溜息が出る。
 
 
「なんや、
 さっきまで燥いどったやないか」
 
「…だって…」
 
 
鼻を啜る音を聞いてやっと泣いていることに気付いた。
 
 
「りゅうじとはなれたく…ぅ、
 ないもん…」
 
 
ここで泣かれては不審者扱いされ兼ねない。
 
勝呂もこの後正十字学園に行かなければならないのに燐は一向に泣き止まない。
 
 
「燐…ほんま堪忍……」
 
「だって…だって、ぅぇ…」
 
「こんな所で何をしているんですか」
 
「?!や、ちゃうんです!
 俺はこの子の保護者で…」
 
「何を言っているんですか、勝呂君」
 
「へ?」
 
 
振り返ると変わらず奇抜な格好をしたメフィストが立っていた。
 
 
「ほほぅ…君が燐くんですか」
 
「…何で理事長がここに……」
 
 
燐は勝呂の後ろに隠れてじっと身を潜めている。
 
 
「これは失敬!実は私、
 昨年からこの正十字保育園の
 園長となりまして」
 
「え、園長??!」
 
 
祓魔師を辞めたこの3年間、祓魔師に関係する輩とは縁を切っていた。
 
もちろん、目の前にいるメフィストとも。
 
 
「りゅうじ、このひと
 えんちょーせんせいなのか?」
 
「あ、ああ…そうらしいで…」
 
「こんにちは燐くん。
 私は園長のメフィストといいます」
 
「めふぃすと?」
 
 
新たな出来事に興味を示した燐はすっかり泣き止んでいた。
 
 
「ほれ、燐
 『よろしくお願いします』やろ」
 
「よろしくおねがいします!」
 
「元気でよろしい。
 それではどうぞお入りなさい」
 
 
施設は思っていた物よりも大きくメフィストの後をついて行った。
 
>Now, it is the beginning of a
 new adventure.
(さあ、新しい冒険の始まりです)
 End


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