▼Weakness

『りんあさだぞ!おきないのか?』
 
「…ん、クロ…?」
 
 
薄らと重たい瞼を開ければ自分の使い魔であるクロが必死に布団を引っ張っていた。
 
 
「……頭痛ぇ…」
 
『あたま?だいじょうぶか?』
 
 
突如襲う酷い激痛に思うように身体が動かない。
 
 
「……無理…」
 
『ど、どうしよう!たいへんだ!』
 
「クロ…大丈夫だから」
 
 
そう言ってもクロは慌てて聞く耳を一切持たない。
 
 
『りゅうじたいへんだ!りんが!』
 
「あ…」
 
 
開け放された扉から猛ダッシュで駆け下りるクロに伸ばした腕は届かなかった。
 
仕方なく布団に潜り直して熱い吐息を吐き出した。
 
 
(竜士来るかな…?)
 
 
不安と期待が入り混じる中、恋に焦がれた相手を想い、描く。
 
 
(触りたい、寂しい、キスしたい)
 
 
熱にやられた頭では正常なことは考えられず欲望だけが渦巻いた。
 
 
「燐、何かあったんか?
 えらいクロが喚いとったぞ」
 
「……竜士…?」
 
 
上半身を半分起こしてみてはまたも襲われる頭痛に目眩さえ起こしそうになる。
 
 
「なっ、大丈夫か?!」
 
「ん……へーき…」
 
 
迷惑をかけるわけにはいかない。
 
覚束ない足取りでふらふらとさ迷うが勝呂の腕に寄りかかってしまった。
 
 
「嘘言うな。ほれ、デコ貸してみぃ」
 
「ッ?!」
 
 
燐の身長に合わせて屈んだ勝呂は額と額を張り合わせた。
 
間近に見る睫毛とか唇の形に自然と胸が高鳴る。
 
普通の体温であろう勝呂の額は自分の物よりも冷たく気持ちがよかった。
 
 
「大分熱いな…薬と飯持って来たる
 からもう一回寝よけ」
 
「…うん…」
 
 
勝呂のいなくなった部屋の中、見慣れた天井を眺める。
 
迷惑をかけたくないと思っていたのに。
 
枕を握る腕は酷く弱々しくて病に犯される哀れな自分に可笑しくなった。
 
>Show your weakness.
(君の弱さを見せて) End


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