▼Darling

「燐くん、今日一緒に帰らへん?」
 
 
鞄に教科書を詰め込む燐は一言悪いと言って両手を合わせた。
 
 
「テスト近いから雪男に勉強教えて
 もらんねぇと…」
 
「そらあかんなぁ。
 ほんならまた明日なー」
 
「おう、じゃあな!」
 
 
志摩に手を振った後、重たい荷物を背負って廊下を走った。
 
雪男のクラスは二つ隣にある。
 
 
「雪男ー!勉強教えてくれっ!」
 
 
昔から仲が良く兄弟のように育ってきた。
 
 
「また勉強するんだ…」
 
 
志摩といた時間も長いが雪男といた時間もそれに等しい。
 
 
「いいだろ別に!
 わかんねぇんだから」
 
「はいはい」
 
 
雪男の前にある椅子を借りて向かい合わせの勉強を始める。
 
苦手な教科は沢山あるから少しでも多く克服したい。
 
 
「で、今日は何を勉強する?」
 
「えっと…社会と英語と数学と…
 あと国語もわかんねぇ」
 
「それテストの教科ほとんどだよね」
 
「し、仕方ねぇだろ!」
 
 
燐が熱心に勉強するには訳があった。
 
勝呂と同じ祓魔師になる為正十字学園に入学することだ。
 
あと一年すれば嫌でも進路を決めなければならない。
 
憧れでもある祓魔師になる為今この時期に成績を上げているのだ。
 
 
「…xは8でyが3?」
 
「正解」
 
 
雪男の指導のお陰で最近では二次関数もお手の物。
 
 
「おっしゃあ!!
 これで俺も合格間違いなしだな!」
 
「気が早すぎるよ…」
 
 
雪男も同じく祓魔師になる為正十字学園に入学するつもりだ。
 
残念ながら今の燐では筆記試験で落選する確率が非常に高い。
 
必死にノートとにらめっこをする燐も承知の上。
 
それでも打倒魔神という果てしない目標が燐を成長させる糧となった。
 
 
「あ、そこは約分して6になるよ」
 
「これか、さんきゅ」
 
 
なによりこうして過ごす雪男との時間が好きだった。
 
>The darling smile.
(その愛おしい笑顔は) End


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