▼Savior

「あーめあーめっふーれふーれっ
 かぁーさーんがぁー」
 
 
藍色の傘を揺らす燐は勝呂と並んで水溜まりの上を歩いた。
 
 
「じゃーのめーでっおーむかーえっ
 うーれ………?」
 
 
揺れる水面にはぐっしょりと濡れたダンボールが映る。
 
 
「どないした?」
 
「りゅうじ…あれ、何?」
 
 
裾を掴んで揺する燐は不思議そうにダンボールを指差した。
 
中に何かが居るらしく音をたてて動いている。
 
 
「…さぁ、何やろなあ…」
 
「りゅうじ!あれ開けて!」
 
「ぅえ??!俺がか?!」
 
 
早く、と急かす燐は得体の知れないものを怖がって裾を離さない。
 
仕方なくしゃがみこみ閉じたダンボールをゆっくりと開けた。
 
 
「わ、わ!りゅうじ!猫だ!」
 
 
若干白の混じった黒猫は開けるや否や興奮する燐に飛び付いた。
 
 
「う、わ!な、」
 
『まっくらこわい!たすけて!』
 
「猫がしゃべった!!」
 
「はぁ?」
 
 
目の前にいる猫は変わらず鳴き喚いている。
 
大体猫が会話をするなどファンシーにも程がある。
 
 
「本当だって!
 助けてって言ってる!」
 
「んなこと言うてもなぁ…」
 
 
どんなに耳を澄ましたって猫本来の鳴き声にしか聞こえない。
 
 
「まあ置いとくのも可哀想やし、
 しゃあなし連れて帰るか…」
 
「本当か?!」
 
 
大事に黒猫を抱く燐は嬉しそうに傘を手に取って歩きだした。
 
>The blue Savior.
(青の救世主) End


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