▼Well

「すっげ、ふわふわだ!」
 
 
猫を風呂に入れることはかなり大変だ。
 
嫌がって外に出たがる奴もいれば反撃とばかりに爪を剥き出す奴もいる。
 
だが、この黒猫はどちらでもなく寧ろ満喫している様にしか見えなかった。
 
 
「しっかしコイツ、
 どっかで見たような…」
 
 
耳の縁にある小さな角、猫であるのに存在する牙、そして疎らに動く二本の尻尾…
 
 
「猫又…か?」
 
「猫又って何だ?」
 
 
燐は猫を撫でていた手を止めて聞き慣れない言葉に頭を傾けた。
 
 
「何百年も長生きした猫のことや。
 …まあ、神様みたいなもんやな」
 
「す、すげぇ!!
 な、お前何才なんだ?」
 
『ん…んと……たしか、
 ひゃくにじゅういっさいだ!』
 
「121才?!!」
 
「最近はどこに奉られとるかも
 不明やったになぁ…」
 
 
どうした事かと頭を抱える勝呂は燐の呼ぶ声に遅れて反応した。
 
 
「りゅうじ…あ、あのな」
 
「あ?何や?」
 
 
何か言いたげに俯く燐は上目使いで此方を見上げる。
 
 
「おれ、こいつ飼いたい」
 
 
こいつとは恐らく今抱いている猫のことだろう。
 
ダメだ、と言いかけた勝呂だったが口を塞いでまた考え事を始めた。
 
 
「いや…別に飼うたらあかん訳でも
 ないんやけど、あの猫又やから何
 曝すか分からへんし…せやけど…」
 
『いいって!』
 
「本当に?!
 りゅうじありがとうっ!」
 
「え、あ、や…
 俺は何も言うてへんねやけど…」
 
「そうだな〜…
 じゃあお前黒いから“クロ”な!」
 
『くろ?おれのなまえか?』
 
「そうだぞ、お前の名前だ!」
 
「燐、まだ飼うて決めた訳や…」
 
「おれは燐。よろしくな、クロ!」
 
「人の話を聞けえええ!!!!」
 
 
只でさえ賑やかな二人に家族が一匹増えたとか。
 
>Thank you for your
 consideration.
(よろしくお願いします) End


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