▼Glass

「なー、まゆげー」
 
「うるさいわね!わたしはまゆげ
 じゃないっていってるでしょ!」
 
 
罵倒の如く怒る出雲は変なあだ名を付けた燐を睨み付けた。
 
 
「こまかいこときにすんなよ〜」
 
「ぜんぜんこまかくないわよっ!!」
 
 
精々幼児のガン飛ばしなどそれ程怖いものでもないが。
 
 
「とにかくはやくつづきするわよ!」
 
「は〜い…」
 
 
今日は生憎の雨で外で遊べそうにない。
 
仕方なく絵本を読んでいたらしえみが一緒に遊ぼうと誘ってきた。
 
何も知らない燐は二つ返事で参加することにした。
 
苦手である出雲が居ることも知らずに。
 
 
「おかえりなさい、あなた」
 
「おー、ただいまぁ」
 
「おかえり、りん」
 
「しえみばーちゃん、ただいま」
 
 
燐本人はママゴトが嫌いではなかったが役割分担に不満を感じていた。
 
 
「なんでしえみは
 ばーちゃんなんだ?」
 
 
別におばあちゃん役は無くても大して変化はないと思うが…
 
 
「わたしは
 もうとしだからだよ、りん」
 
「そーなのか?」
 
 
全く答えになっていないが燐なりに納得したらしい。
 
全く答えになっていないが。
 
 
「じゃあアンタも
 おくさんやくしなさい!」
 
「えっ!いいの?」
 
「そのかわり、
 おくさんになれるのはどっちかよ」
 
「??」
 
「アンタ、どっちをおくさんに
 したいかきめなさい!」
 
「え?!おれ?」
 
 
究極の選択に立たされた燐。
 
だが燐の返答はどちらも臨むものではなかった。
 
 
「…おれ、りゅうじがいい!」
 
 
まさかの保護者参戦という形になったのだ。
 
 
「…ちょっと、
 だれよりゅうじって!」
 
「わんこさんのなまえかな?」
 
「りゅうじは、りゅうじだ!
 おれはりゅうじがすきだから、
 りゅうじとけっこんする!」
 
「りんはもうけっこんするひとが
 きまってるんだね!すごいね!」
 
「まあなっ!」
 
 
へへへと鼻を擦る燐を他所に納得のいかない出雲は持っていたエプロンを床に叩きつけた。
 
 
「うそよ!
 そんなのいるはずないじゃない!」
 
「うそじゃねーもん!いるもん!」
 
「じゃあしょうこをみせなさいよ!」
 
「しょーこ?」
 
 
そうよと怒鳴る出雲はポケットの中から皺くちゃになった映画の広告を広げてみせた。
 
 
「ちゃんとあいしあってるひとはね、
 こうやってちゅーするんだから!」
 
「ちゅー?」
 
「わ、わ、わ!かみきさん!
 せんせいにおこられちゃうよ…」
 
「だいじょうぶよ。
 …もしアンタがそいつにちゅー
 できたらしんじてあげてもいいわ」
 
「じょうとうだ!いまにみてろよ!」
 
 
勝呂に災難が降りかかるまで、あと
 
>The shoes of glass, are placed.
(硝子の靴、置いておきますね)
 End


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