▼Romantic

「奥村燐、お父さんが迎えに来たぞ」
 
「はーい!」
 
 
ネイガウスは残り少ない生徒を見送り、その日起こった出来事を細かく日誌に記した。
 
 
「燐、今日もいっぱい遊んだか?」
 
「りゅうじっ!」
 
 
飛びつく燐、それを抱き締める勝呂を見て随分平和になったなと苦笑してしまう。
 
 
「…アンタがりゅうじね」
 
「ん?なんや、燐の友達か?」
 
「うん!まゆげ!」
 
「あー…
 この子があの眉毛言いよった子か」
 
「うるさいわね!まゆげじゃない
 っていってるでしょ!!」
 
 
言い合っている最中、初めて見る勝呂にしえみは出雲の後ろに隠れてしまった。
 
 
「そっちおるんはしえみちゃんか?」
 
「えっ!なんでわたしのこと…」
 
「燐がよう話すからな。
 ふわふわで可愛え女の子やて」
 
「かっ…かわいい…って、
 はじめていわれた…」
 
 
しえみは湯気が出そうなほど顔を赤くしてまた出雲の後ろに隠れてしまった。
 
 
「あの、えっと…りんの
 おとうさんも、かっこいいです!」
 
「りゅうじかっこいいって!
 よかったな!」
 
「ありがとうな」
 
 
くしゃりとしえみの頭を撫でれば少し照れ臭そうに笑った。
 
 
「に、にわとりさんみたいで
 かっこいいです!」
 
「にわとりぃ?!!」
 
「「ぶふっっ!!」」
 
 
燐と出雲は余程面白かったのかゲラゲラと腹を抑えながら笑っている。
 
 
「だははは!!にわとりだって!
 りゅうじかっけえ!!」
 
「に、にわとりってアンタ!
 あはははは!!!」
 
「…あ、ありがとうな…
 しえみちゃん……」
 
「は、はいっ!」
 
 
子供は思ったことを素直に発言する純粋なものなのだ。
 
この頭髪ならそう思われても仕方がない。
 
 
「将来ええ
 お嫁さんになれたらええなあ」
 
「ぅ……はっ!およめさん!!」
 
 
しえみは何かを思い出したように出雲に振り返り、目を合わせば頷いてもう一度此方に視線を向けた。
 
 
「ちょっと、アンタ!
 はやくしょうこをみせなさいよ!」
 
「ぅお!そ、そうだな!」
 
 
勝呂は分からず燐を胸に抱いたまま三人の遣り取りを眺めていた。
 
深くすー、はー、と大きく酸素を吸った燐はよし!とだけ叫んだ。
 
 
「りゅうじ、だいすき」
 
 
一瞬何が起こったのか分からず時間が止まったように思えたが、唇に触れた感触は未だに消えない。
 
 
「わ…みちゃった…」
 
 
しえみは顔を覆った指の隙間から燐と勝呂を見ている。
 
 
「や、やるじゃない…しょうがない
 からこれでみとめてあげるわ」
 
 
出雲は若干引きながらも燐と交わした約束を守った。
 
 
「どーだ!りゅうじは、おれの
 およめさんだからな!」
 
 
燐は胸を張って参ったかとでも言うように高々と笑った。
 
 
「…俺の意見は完全スルーなんやな」
 
>It is romantically far.
(ロマンチックには程遠いですが)
 End


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