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何時もは人がいない図書室。しかしながら図書委員と言うものは、そんなのはお構いなしに当番制で仕事をしなければならない。今日は自分の当番なので早々に図書室に来て暇潰しに音楽を聴きながら本を読んでいた。……其処までは良かったんだ。




「雪ちゃん、何の音楽聴いてるの?あ、これ僕好きかも」

『勝手に聴くな、くっつくな』

「折角二人っきりなのに酷いなぁ」




私の腰に腕を回して抱き着きながら勝手に音楽プレイヤーを弄って曲を変えていく。どうして、二人っきりになったかと言えば此奴も図書委員だから。酷く面倒くさがり屋のくせに何故か図書委員に立候補。そして同じ日に仕事が入ってるからこうなってしまった訳だ。




『鬱陶しいから離れろ、読みにくい』

「んじゃあ君が僕の膝に乗ってくれれば良いんじゃない?」

『はっ?何でそうなる』

「本当にツンデレだよね」

『通訳をくれ、通訳を』




頬擦りしながら幸せそうに微笑む沖田。何がそんなに幸せなのか理解出来ない。はぁ…と溜め息を吐くと同時に図書室の扉が乱暴に開かれた。其処に居たのは南雲。走ってきたらしく息を切らしていた。私から沖田を引き剥がし、自分が抱き着いて来た。そのため沖田の機嫌が一気に悪くなる。




「雪、此奴と二人っきりになったら駄目だって言っただろ」

『仕事なんだし仕方ないだろ』

「駄目だって言ったら駄目。沖田は獣なんだから」

「ちょっと急に割り込んできて随分な言い分なんじゃない?」

「ふん、其処で吠えてなよ」




非常に面倒な事に喧嘩を始める二人。煩いのでプレイヤーの音量を上げて残った仕事をしていると予鈴が鳴った。本を片手に図書室を出ていく。後から律儀に鍵を閉めて二人は追い掛けてきた。けど未だ喧嘩は続いているらしい。




「雪がお前みたいな奴と付き合うなんて有り得ないね」

「有り得ないのは君の方じゃない?幼馴染みとは言え、弟ぐらいにしか見られてないんだし」

「嫉妬なんて醜いよ沖田」

「嫉妬?嫉妬してるのはそっちでしょ」




嫉妬していようがいまいが、どちらでも良いのだが南雲は教室が反対方向ではないだろうか。そう思っていると悔しげな表情で教室へと戻っていく。途端に沖田がくっついてきた。






◇◆◇◆◇◆◇




放課後になり、今日は南雲が勉強を教えて欲しいと言う事で南雲の家まで来ていた。途中、妨害工作が何回かあったが無事に辿り着いていた。




『それで南雲、勉強は?』

「やりたくない」

『じゃあ何する訳』

「…ねえ、雪。やっぱり雪にとっては俺は弟みたいなもんなの…?」

『沖田に言われた事、気にしてるのか?』




そう尋ねると小さく頷いた。気にする事ないのに馬鹿だな、小さく呟きながら昔みたいに頭を撫でてやる。暫くすると南雲は私に体を預けてきた。甘える時は何時もこうだ。




『正直言うと弟みたいなもんだけど、お前が大切な奴って言うのは代わらないしな。気にする必要はないよ』

「じゃあ俺が頑張ったらさ、一番大切な奴になれる?」

『かもな』




私の答えを聞くと満足そうに笑って、膝の上に頭を置く。どうやら眠いようなので黙って膝を貸していると微かな寝息が聞こえてきた。寝顔は昔から変わってはいない。


生まれ変わって南雲と雪村とは一つ違いの幼馴染みになった。血縁的には遠縁にあたる。だから必然的に一つ歳上の自分が二人の面倒を見る事が多かった。弟のように思ってしまうのも仕方がない。




『南雲も難しい年頃になったなぁ…。平和なんだし、今度こそ幸せになれよ』




前世では不幸な死を遂げた南雲。それ故に彼も含めて全員が幸せになれれば良いと私は思う。自分は別になれなくたって良い、皆が幸せならば。




「雪、」

『ん?』

「お前の事は俺が幸せにしてあげるよ。だから、俺と付き合って?」




寝惚けたような声で南雲は言う。それに驚いたように目を瞬き、次いで苦笑を浮かべて見せた。




『ありがとう。けど、私より南雲に相応しい子が居るよ。…眠いんでしょ、寝てな』

「…俺、諦め、ないから……」




再び眠りについた南雲の頭を優しく撫で、困ったように小さく笑った。




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