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久々に風間に振り回される事なく、部屋でごろごろしていると不知火がやって来た。その腰には西洋渡来のかなり小型化された銃が下げられていた。刀と同じく人を殺める道具。それを見ているのが嫌で無意識に視線を逸らす。その事に気が付いた不知火は困ったように苦笑を浮かべた。風間は俺の流血沙汰を嫌う性情を腑抜けだと言うが、少なくとも彼はそう思っていないようだった。




「元気にやってんか?雪」

『まぁ、それなりに。けど風間に振り回されぱなしだけどな』

「またか…。お前も大変だな、昔から彼奴のお守り役で」

『慣れたさ、もう十数年の付き合いだ』

「そういや、お前等って幼馴染みだったか?」

『いんや、従兄同士』




母が風間の父親の妹。この体に流れている血の半分は風間家の血なのだ。その事を誇れと言われたが、俺は血筋の上に胡座を掻く気には到底なれなかった。元々、誰かの上に立つのは苦手だし好きではない。それに日陰の身の方が性に合っている。自由気儘にが俺の性質だし、一族の長などは向かないのだから誰かの補佐でもしていた方が楽だ。


そう思いながら何処か自嘲的な笑みを見せ、煎れたばかりの茶を不知火へと渡す。自分の分を手に取り、熱い茶を喉へと流し込む。猫舌のため火傷をしたが直ぐに治った。




『しっかし彼奴の嫁を早く見付けねえと不味い事になるなぁー』

「雪村の女鬼が居んじゃねえか」

『嫌がってんのに無理強いするつもりか。頭を冷やせ、頭を。しかも南雲に文句言われたし…』

「土佐の奴に何って言われたんだ?」




ちょっと、雪。

何だ?

風間に千鶴を諦めるように説得してよ。俺の妹をあんな奴に嫁がさせるか。

えっそれ俺に言う訳?

だって一番話が分かるのは、お前だろ。

あぁ確かに彼奴には通じねえな。

いっそうお前が女鬼だったら良かったのに。そうすれば千鶴は狙われなくて済んだ。

えっ…。

何で女に生まれなかったんだよ。





『…とまぁこんな事を』

「あー…確かに正論かもな」

『何で!?』

「近くに純血の女鬼が居ればわざわざ嫁捜しなんぞしなくて済むわけだろ。そうすりゃあ、誰にも被害がねえ」




遠回しに犠牲者が一人いれば言いと告げられ、畳にのの字を書きながらいじける雪。本当に男に生まれて良かったと心底思わざるおえない。だって彼奴の嫁とか…嫌だ。再びゴロリと畳の上に横になり、他愛もない話をする。こういった時間は案外嫌いではなかった。




『そういや八瀬の姫さんはどうしてる?』

「相変わらずだぜ。お前に会いたがってたぞ」

『ふぅん…そろそろ、あの姫さんも婚姻しないと不味いよな。あの二人がくっ付けば丸く収まるんじゃね?』

「……本気で言ってんのか?」

『ああ』




そう答えれば不知火は「頭が痛ェ」と洩らす。どうやら本当に痛むらしい。薬を進めれば、人の顔を見ながら深い溜め息を吐いて呆れたように俺の額を指弾する。力が強いから痛いし、絶対に赤くなっている事は間違いない。と言うか何故指弾されたかが分からない。




「雪、八瀬の姫さんの前で今の事は言うなよ。死にたくなければな」

『何でだよ。彼方だって純血の子孫が欲しいんだろ?』

「(姫さん泣くだろうな。此奴、鈍い癖に落とす爆弾でけえし)良いから、言うな」

『わーったよ。言わない』




納得が出来なさそうしに首を傾げながら返事をすれば、安堵したように不知火は息を吐き出す。二杯目の茶を煎れていると部屋に手紙が届いた。差出人は今まで話をしていた八瀬の姫さん。もぐもぐと団子を食べながら読むと、どうやら何処か外で会いたいと言う旨が書かれていた。もし良ければ一条橋の袂で待っているから来て欲しいと言う事だ。別に用はないから良いか。




『姫さんに呼ばれたから行くわ。適当に寛いで行け』

「くれぐれも泣かすんじゃねえぞ」

『んー』

「(不安だ…)」




やる気の無さそな声で生返事をし、部屋を出ていく。その後ろ姿を見て溜め息を吐かれている事を知る由もなかった。




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