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女物の着物を来た南雲と共に市中を歩く。女装をしている理由は此方の方が敵対心がない事を告げるのに良いからだ。巡察の時に会うのが一番楽らしく、新選組の姿を捜す。確かにその方が俺としても気が楽だ。暫くすると目立つ浅葱色の羽織を見付ける。その集団に桜色の着物の女鬼を見付けた。珍しく不安そうな南雲の手を引き、浅葱色の集団に近付いていく。相手も此方に気が付いた。




『こんにちは、赤髪のおにーさん』

「…何の用だ」

『そう殺気立たないでよ。雪村のお嬢さんに話したい事があるんだって』




俺の言葉に背後に隠れるように居た南雲に視線が向けられる。こんな弱気なのを初めて見るらしく驚いていた。




『危害は加えるつもりないし、あくまで話すのは南雲だけ。心配なら近くで見てれば良い』

「…あの、原田さん…少しだけ、私も薫と話したいです」

「千鶴……分かった。ただし約束を破れば死んで貰うぜ」

『心得ました。ほら、行ってきな』




南雲の背を押せば、戸惑うように此方を見た後に近くの茶屋へと女鬼と共に入っていく。それを見て僅かに安心したように張っていた気を緩め、民家の塀へと寄り掛かる。どんな話がされるかは分からないが、出来れば今日を境に彼奴の心が少しでも軽くなれば良い。




『礼を言うよ、おにーさん。許可をくれて』

「…お前、彼奴の保護者か何かか?橋渡しまでして」

『似たようなもんさ。南雲は昔から知ってるし。…彼奴は寂しがり屋なんだよ』

「寂しがり屋?」

『あぁ。本当は妹と仲直りして昔のように話したりしたいんだよ。けど置かれた環境が違いすぎた。だから憎んでしまっただけだ』




だから今日、話をさせて和解の方に持っていきたかっただけだ。
そう締め括ると赤髪は苦笑を浮かべた。急に苦笑を浮かべるので怪訝そうな表情へ変わる。そうしているうちにも苦笑から笑いへと転じる。ますます意味が分からなくなってくる。しまいには「お前って変な奴だな」と滅茶苦茶失礼な事を言われた。ほんと失礼だな。




『…何が其処まで可笑しいんだ』

「他の鬼とは随分違うと思ってな。お前は千鶴を嫁にとか思わないのか?」

『生憎、純血の女鬼に興味がなくてな。あの馬鹿と同じに思われるのは心外だ』

「そりゃあ悪ぃ」




警戒は続いているものの警戒心が薄いのではと思わされる。普通ならこんなに話す事はない。暫く暇潰し程度に話していると、ぎこちない笑みを浮かべながら何処か嬉しげな南雲が出てきた。
その後に女鬼が着いて出てくる。表情は明るく我知らずと安堵の息が洩れた。軽く頭を下げ、南雲を連れて立ち去る。少し離れた処で呼び止められ、振り替える。




「俺は原田左之助だ。お前の名前は?」

『一ノ瀬雪。…またな、原田』




それからは呼び止められる事なく歩を進めていく。隣に居た南雲は名前を教えた事が不思議そうだ。人通りが少ない場所で突然、南雲が足を止めた。訝しげに眉を寄せ、首を捻る。




『どうした?』

「…今回ばかりは礼を言うよ。ありがとう、雪」




照れたように頬を染め、言い切る前にそっぽを向いてしまう。




『…その様子だと良い結果が聞けそうだな』

「一応、仲直りは出来た。理解は未だして貰えないかもしれないけど…」

『良かったじゃん。よく頑張ったな、南雲』




泣きそうながらも嬉しそうに笑う南雲。これで一件落着と言う訳だ。これからは少しずつ兄妹としての時間を持てれば良いと思う。そうすれば昔のようにとは行かずとも…。しかし、まだ問題は山積みだ。先ずは風間の婚活。誰か彼奴を好きになる純血の女鬼が居ると楽なのだが。はぁ…と溜め息を吐き、明日からの苦難に頭を悩ますのだった。




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