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元父を思い出す



今朝方、私を心配したオーナーから電話が来た。オーナーの息子さんが私の元お父さんと同じ職場で働いていて、先日から仕事場に来ていないそうだ。ぞわり、と嫌な気が全身を駆け巡った。汗がたらりと、背中を伝った。





私の元父は、ここらでは珍しい冷たい人だった。かといって無愛想でも、冷徹でもない。心が、人を愛するという心が、人を心配するという心が、父には何もなかった。言い過ぎるかもしれないが、サイコパスに少し似ている。悲劇のヒロインを気取るつもりはない。が、私は父から愛されていなかったと思う。いや、愛されていたはずはない。気分が良いと私達に構ってきて、誰かに何かあった時は一声かけて終わり。
結局、三年前に父が問題を起こし、母と父は離婚した。母に着いていくことは何も言わず決まっていた。父に着いていくという選択肢は全く皆無だった。それからお互い別々の家に住み、三年を過ごしたのだ。顔も合わさずに、三年間。名字は学校でなんか言われるかもしれないから、変えなかったけど。





次の日、歩いて学校に行った。帰りのお迎えに佐々木さんがまた来てくれるそうだ。日々募る不安は学校では捨てることにした。
皆、絶対帰ってくる。絶対に。皆、絶対に"生きてる"。

その時、ハッと我に返った。自身への嫌悪感が体中を支配して、気持ち悪くなった。私は、父がお母さん達を殺したとでも――。


キーンコーンカーンコーン。
六時限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。一日があっさりと終わった。



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