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ああ、やっぱり。



「名前、今日委員会だよ」


あ、そっか。後ろの席にいる仲の良い早紀に声をかけられ、私は今日委員会があることに気付く。私と早紀は同じ文化委員。早紀が委員長なので、私はノリで副委員長。書記をやってくれる。と聞かれ、一人で席に座っているのも何だと思い、前に出て書記を務めることにした。

前の席には、小学生の頃からの同級生の気になる人が座っていた。名前は歩。中学の頃はよく私にちょっかいをかけてきていて、そのせいか私は彼のことを意識し始めた。それどころか、彼は芸能人並みの顔の整い方をしていて、何十人もの女子を魅了してきた。だが、自分は顔が良いと理解していないらしく、少し捻くれた性格をしている。それに、少し不良っぽくなったかな。高一の時は話しかけてもらったけど、二年からは全くで、疎遠になった感じだし。それに、ね。今は彼のことを気にしている場合じゃないでしょ。


「名前、これ黒板に写してくれる?背届かないかもしれないけど」
「いや、確かに届かないかもな…あと五センチ欲しい」
「先生、名前に身長を」
「やだよ」


横にいた文化委員の顧問の高橋先生が苦笑した。確かに私身長低いけど。彼は二十五歳で、顔は歩よりは劣るが、結構顔は良い。身長も高く、細身。彼も私の事情を知っていて、昨日から心配の声を度々かけてくれる。大丈夫ですよ。と笑って返事を返すのに、高橋先生は毎回暗い顔をして、そうだな。と呟いた。彼の優しさが、胸にじく、と染みた。

写してと渡された書類の一文字目の漢字が違っていたので、高橋先生に指摘しようとした時。前の廊下側の扉がガラガラと音を立てて開かれた。あちらから開けた扉。教室へ顔を覗かせたのは、佐々木さんだった。
何故、佐々木さんが。


「名字さん、荷物纏めて来てくれますか。すみません、名字さん抜けさせてもらいます」


佐々木さんは高橋先生に頭を下げて言った。昨日よりも、佐々木さんは真面目な顔をしている。それに嫌な気がして、私は思わず口を滑らせた。


「悪い知らせですか?」


と。佐々木さんは私の質問にバツが悪そうに目を逸らし、言葉を濁らせた。

"ああ、やっぱり。"

早紀、ごめんね抜けるね。とだけ言って、歩や同学年、他学年の視線が集まる中、震える手で床に置いてあったリュックに手を伸ばした。ずっと溜めていた苦しみが寂しさが呆気なさが、胸にこみ上げてきて、私は俯きがちに涙を流した。深呼吸をして、震える唇をぐっと噛んで、私はリュックを背負った。佐々木さんに背中を押され、私は教室から出た。



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