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学校へ行ってからの、また一人



お母さん達は帰ってこないというのに、朝は平然と来る。学校へ行く足取りが重い。朝ごはん。食べる気にはならなかった。昼ご飯は購買にすることにして、数千円入った財布を持って家を出た。いつもは自転車で登校していたけど、帰りは車だし歩いて行くことにした。






落ち込んでちゃ、駄目だ。悪い方向に全て行ってしまう。そう思った私は、みんなの前であえて何時も通りに振る舞った。佑香が、大丈夫?と本当に心配そうな顔で尋ねてきたが、うん、大丈夫。と返事を返した私の顔は上手く笑えていただろうか。でもこの話をしていたら泣いてしまいそうだったから、私は今日は暑いね。と話を逸らした。佑香は何か言いたげな顔で、うん。と頷いた。





何時も通りでいて、楽しい日常。やっぱり教室に居ると楽しい。家で臆病な顔をしている自分が笑えてきた。だけどやっぱり、笑っている時も頭の片隅にはお母さん達の顔が浮かんだ。

五時過ぎ。職員室で警察の人を待っていたら、女の人が笑顔で迎えに来てくれた。大丈夫、お母さん達は帰ってくるよ。と背中をポンと押され、涙目で私は笑いかけた。泣くのを堪えた私の下手な笑顔は、人に見せられる物ではなかったと思う。
家まで送ってもらっている途中に、女の人の名前を教えてもらった。佐々木薫さん。この土日にあったエピソードを佐々木さんにたくさん話した。佐々木さんの笑顔を見て、心が少し休まった気がする。





家に着いた。夕飯、どうしよう。お母さん、今何処にいるのかな。生姜焼きとか、茄子の味噌炒めとか、食べたいな。お母さんの味が恋しいとは、こういう時に言うのだろうか。数日前の賑やかな日常が脳裏に過って、顔が思わず歪んだ。頭をブンブンと横に振って、泣くのを堪えた。お風呂に入って、憂鬱な気分を消すことにした。

一人で布団で寝るのに慣れてしまう自分が心の片隅に居た。でも、一人でテレビを見るのもご飯を食べるのも、何も楽しくはない。空虚な時間だけが坦々と過ぎていった。



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