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真っ逆さま。



お寿司をたくさん食べて、あたたかいお風呂に入って、寝るためのお部屋をもらって。

私だけの八畳ほどの和室は、布団のみ敷かれており、ひっそりとしていた。
寝ることを決めた私は、敷布団の中に脚をするりと入れる。ちょっと冷たいけど気持ちいい。

横向きの態勢で、スマートフォンを使い時間を確認する。…ええと、十時半か。

おやすみなさい、と近藤さんと沖田さんには挨拶できた。でも坂田さんと土方さんは九時の時点で床に倒れており、さっき意識を確認すると、いびきを掻きながら気持ちよさそうに眠っていた。結局勝負が着いたのかよく分からないから、明日聞こう。正直どっちでもいいけど。

スマートフォンの電源ボタンを押し、ごろりと仰向けになる。真っ暗な天井が視界いっぱいになる。


――今日は楽しかったな。
――今日は久しぶりにたくさん笑った気がする。
――でも疲れたな。
――…寝よう。


――今日は、どうか良い夢が見られますように。




***




まっくら。
まっくら、なのか?
…家だ。
誰かいる。
……あ、お母さんだ。あれ、みんな、みんないる。


「名前」


…なあに、お母さん。


「名前はいいねえ。私たちは、ここから出られないのに」


――。


「何を笑っているの? 何か楽しいことがあったの? どんなことがあったの?」
「お姉ちゃん」
「ねえねえ、早くこっちに来てよ。
 包丁は持ってる? なかったら大丈夫。お父さんが持ってるよ」
「そうね。お父さん横の部屋にいるから。早く行ってきなさい」
「大丈夫だって! 痛くないから」
「お姉ちゃん」
「そうよ。痛くない。特に首なんか、気持ちいいって」
「私は、痛かった」
「そっちより、こっちの方が楽しいよ。みんないるんだから。そうだ。こっちでゲームしようよ。まだゲーム途中でしょ」
「痛い。痛い。すごく、痛い」


――……。
これは、
これは、夢?


「あんた今日バイトでしょ。送って行ってあげる」
「ねえ、なんでお姉ちゃんだけ元気なの?」
「こっちは楽しいよお、名前」
「お姉ちゃんだけ、なんで笑ってるの? なんで生きてるの? なんで?」
「あ、お父さん。名前が行かないから来てくれた」
「お父さんは怖かったよ。真っ黒で、乱暴で、痛い。怖い。何度も助けを求めたのに、誰も来てくれなかった」
「お父さん〜名前お願い〜」


夢、うん、違う。違う。
違う。こんな、仲良くない。こんなんじゃ、ない。

――やめて。いやだ。腕が、あ、体が動かない。なんで? なんで私も。


「大丈夫! 終わったら、こっち来れるから」
「うん。心配しなくていいから」
「お姉ちゃん」
「だから」


おと、お父さん。真っ赤。真っ黒。まっ、か。

包丁が。腕、が。く、くくく、首、が。



「早く死んで」



死ん――




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