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かっこいいのに、強引な人



『こ…ここで?でしょうか?』
「うん。名前ちゃんが良ければ、って感じなんだが」
『あ……えっと…』
「ああ、無理に決める必要はない。今日は見学のつもりでいいんだ。名前ちゃんのこれからの生活の先の選択肢として、ここを挙げただけだから、無理に選ぶ必要はないよ。強制でもない」
『……はい…』
「……名字?」
『あ……えっと、見学、させてもらってもいいですか?ひ…一人で。ちょっと色々、ゆっくり見たくて』
「…ああ、いいが…」
「…一人でいいのか?」
『はい。一人で色々、考えたくて。すいません…』


心配そうに私に視線を送る二人や、用意してもらったオレンジジュースを差し置いて、私は一人で部屋から出た。



――また同じ廊下だ。ぴかぴか。きれい。

色んな部屋を歩き回って、歩き回って、そういえば考えなくちゃな、と思って動きを止めた。居間のようなところに自然と来ていた。テレビや、ソファーがある。

…こ、こんなとこはダメだ。誰か来ちゃうかも。どこか人気がない廊下に行こう。

そう考えて、戸に手をかけた。その時だった。


「あんた、さっきから一人で何してんの?」
『…えっ』


恐る恐る振り向けば、見たことがない人がいた。白でもない少し黒みがかった色で、ふわふわとした髪の男の人に話しかけられてしまった。彼も戸に手をかけ、不思議そうに私を見ている。

…いや、そりゃそうだ。不審すぎるよね。知らない女がうろちょろしてるんだもんね。そりゃやばいよね。怖いよね。いやそうだよね。


『いやあの……』


冷や汗が出てきた気がする。言い訳が何も浮かばないよ。そんな状態なのに、銀髪さんはどんどんこっちに近付いてくる。顔がはっきりと見えるよ。…うわお、イケメンだ。眠そうな顔してるけどイケメンだ。ぱっちり二重。うわあ、緊張する。そしていきなりのあんた発言。怖いよー土方さんこの人怖いよー。私が悪いんだけどねー。


『な、何もしてませんけど…』
「ふうん。まあいいや。お嬢さん名前は?」
『…名字名前です』
「名前か。今ひま?俺の手伝いしてくんね?」
『えっ…ひまって言うか、え?手伝い?』
「そ。今から買い出し行くんだけど、着いてきてくれる?荷物持ちやってほしいんだけど」
『え、買い出し……』


いきなりの名前呼び。そして買い出し。着いてきてくれる?この人と?この人の荷物持ち??え?私そんなことしてていいの?

困惑する私を他所に、数十秒急に消えた銀髪さんは、「よし、金と携帯持ったし、行くぞ」と、なんかまた急に現れてそう言ってきた。なんか「はよ来いよ」的な視線を私に送っている。ええええ、何この人超積極的!誰にでもこういうことしてんの!?

と、困惑している私を放っておかないのが一年前からの仲の土方さんだった。

「おい何勝手に決めてんだテメー」と声が聞こえたと思えば、急に土方さんは銀髪さんの後ろに現れた。銀髪さんの肩に手を置いて、少し怒っているように見える。うわお、どっちもイケメンだ。白と黒。そんなこと言ってる場合じゃない?


「んだよ、ニコチン野郎。手ェ離せや」
「テメーこそうちの名字を勝手に連れ出そうとはいい度胸してんじゃねーか。せめて許可取れや」
「なんでこの子の許可取んのがお前なんだよ。お前この子の保護者?こんなニコチンマヨ野郎、保護者になって欲しくねーだろ。無愛想だし。な?」
『…え、私?いや、土方さん保護者…?とっても良いと思います』
「は?」
『や、優しいし』
「はァ!?こいつが優しいって、なに、え?お前この子の前ではキャラ違ェの?優しい刑事さんでよろしくやってんの?」
「ああああうるせェ!!だからお前と名字会わせたくなかったんだよ!――いいか、名字を連れて行くのはまァ許すが、ぜってーに寂しい思いさせんじゃねェぞ。しつこいぐらいに構ってやれよ」
『いやそんなしつこくしなくていいです』
「あぁ?俺のねちっこさ舐めんじゃねェぞ。俺のしつこさは「前戯長ェこいつ!」ってしょっちゅう言われるくらいしつけーから」
「いや下ネタ挟むなや。はっ倒すぞ」
「俺がお前をはっ倒すぞ」
「いいや俺が」
「いやいや俺が」
『いや、はい、行きますから!行きましょう!買い出し!』


あー見ている限り、この二人仲悪いんだな。ていうかこの二人知り合いなの?さすが土方さん。ていうか私、イケメン二人に取り合いされるなんて、こんな幸運ないぞ。え、取り合いじゃない?まあいいや。ていうか、この人、買い出し行く以前に――


『あの、お兄さん…お名前は?』
「あ?俺?」


さかたぎんとき。
と、銀髪さんがそう言った。
通称、あほの坂田。と、土方さんが付け足してそう言った。



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