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不思議な不思議な



おかしいな。
私、いつ自殺なんかしようとしたんだろう。
昨日?一昨日?えっ、いつだろう……どうして何も覚えてないんだろう。


佐々木さんと土方さんは病室の外へ出て行き、私一人になった。一人にされてしまった。あの人たちはきっと困惑しているんだろう。私があんな返事を返したから。でも、私も困惑してるのは同じ。だって、自殺なんかしてないんだから。

でも、自殺をしてないとすれば、どうして私はここにいるんだろう。あ、栄養失調とか?あ、それならあり得る。最近ろくに食事摂ってなかったから。あ、心なしか私が倒れた時に土方さんがなにか声かけてくれた気がする。あれ、幻覚?それとも私の妄想?妄想か。


「…となると、早くたくさん食べて、元気にならなくちゃ」


よしっ、と私はひとり言を吐いて、晴れた景色の良い窓の外を見つめる。
鳥たちが、私の姿を見ようと、口を動かしながら近付いて来ていた。





「……おい、どういうことだ。自殺未遂じゃねェのか。まさか、誰かにやられ――」
「…土方さん、落ち着いてください。とりあえず私は色々質問して状況を聞き出してみますから、土方さんは自殺未遂なのか他殺未遂なのか調べてくれませんか。…多分、自殺未遂だとは思いますが」
「……ああ、分かった。何かあったら、また呼んでくれ」


土方さんに軽く頭を下げて、私はよし。心の中で自身を奮い立てて、彼女がいる部屋のドアをノックした。どうぞ。と言われたので私は静かに扉を開けて入った。


「これ。コンビニでさっき買ってきたんですが……苺のタルト、好きですか?」
『え、あ…ありがとうございます!タルト、私大好きです』


それは良かったと微笑んで、名前さんにタルトが入った袋を手渡す。


――自殺未遂を図った人物とは思えないくらい、元気だ。私の想像では、彼女は間違いなく自殺を図っている。でも、どうしてそれを認めないのか。なぜなかったことにするのか。…迷惑をかけたくない、そう思っているからか?


「……名字さん。今から、少し、いじわるな質問をします。答えてくれますか?」
「…どうぞ?」
「…あなたはどうして、今病院のベッドで寝ているのでしょう」
「……え、いや…え?私が聞きたいんですが……栄養失調とかですか?私、確かに今ガリガリになりかけてますけど、倒れるまでだとは思わなくて…すいません、ちゃんとこれから食べますので」


――また隠した。


「…栄養失調。それ以外で何か理由はあると思いますか?」
「…えーと、佐々木さんたちが言ってる自殺とか?でもあの、自殺って心当たりゼロで……どこからどこまでが自殺なんですか?栄養失調が自殺なんでしょうか。なら、自殺したってことになるんですけど…」


――はぐらかした?いや、でも、だとすれば演技が上手すぎる。十八の少女がこんなにも上手く嘘を吐き、きょとんとした表情をするものだろうか。
――……もしかしたら、本当に自殺をしたことに気付いていない?


「名前さん。今日、ここに一緒に泊まっていってもいいですか。知らない病院に一人って怖くないですか?」
「…怖いです。ぜひ一緒に泊まっていってください」


私に微笑みかける彼女に合わせて、はい、と私も微笑んでみる。

優しい心をした彼女が、おかしくなっていってしまっている気がして、怖かった。



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