飛び交う言葉『自殺』
ゆっくりと目を開けてみれば、白い天井があった。
少し黒色の汚れがあるその天井は、少しも新しく見えなかった。
ここが付近の病院だと気付いたのは、私が起きたことに驚きながら部屋に入ってきた警察の佐々木さんの発言のおかげだった。
「名字さん…! 大丈夫ですか?痛むのなら、無理に起きなくてもいいですよ」
「…大丈夫です。ここ、どこですか?佐々木さん」
「××病院です。あれから見つけた土方さんが、救急車を呼んでくれたんです。……もうすぐ土方さんが来ると思うので、名字さんの口からちゃんと説明してください」
「説明…って、何の?逆に、説明してもらいたいんですけど……私、倒れてたんですか?今日?え、何の病気です?疲労?」
「……何を言ってるんですか?……名字さん、まさか、覚えてないんですか?」
「何がですか…?」
「……名字さん」
「名字!」
佐々木さんの言葉を遮って現れたのは、土方さんだった。
慌ただしく息を切らしながら、私が寝転んでいるベッドの横に腰を下ろした。手を伸ばせば土方さんの頭が撫でられる位置。あれ、なんでこの人座ったんだろう。
「土方さん?えっと、救急車呼んでくれたんですよね?」
「……なんで……」
「はい?」
「なんで死のうとしたんだよ! 俺に相談してくれれば良かったのに…! ――頼む。もう一人で悩まないでくれ。自殺なんて、考えるんじゃねえ」
「自殺…?」
私の手を握りながら私に必死に語りかける土方さんの目は、泣いているように見えた。
少し、悲しくなった。
けれど、土方さんが言っている一つ一つの単語の意味が分からない。
「私、自殺したんですか?」
私が真顔で尋ねた質問に、返事はなかった。
その後、長い沈黙が部屋中を支配することになった。
前 | top | 次