女兎が啼く | ナノ
バチバチと行き交う嫉妬
「…。お前等…」
『…ッく…なんで、私が…ッ』
「すいません、お巡りさん。思った以上に返すのが遅くなっちゃいました」
「…遅くなったッてお前等…今何時だと思ってんだ?九時だぞ馬鹿」
そう、時刻は六時。昨晩キャバクラで出会った櫻子が名前を連れて、土方が居る屯所に訪れて来た。
土方はひたすら涙を流し、独り言を言い続ける名前を同情の目で見る。櫻子は昨晩と変わらない笑顔で淡々と話していた。
「ご希望でしたらお巡りさんも今度一緒にシましょうね」
「…あ?しねーよ、俺は。つーか名前泣いてんぞ…」
「何か沢山イジメたら泣いちゃって。でも凄く可愛かったです。…またシましょうね、名前先輩」
『ひっ…!』
櫻子は涙を流している名前の耳に口付けて囁く。それに反応して名前は小さく悲鳴をあげると、耳を押さえて逃げるようにしゃがんで、櫻子から距離を取った。
「耳イジメちゃったら、前よりも敏感になっちゃったみたいです。ていうか、昨日結構調教したんで、簡単にイける体になったと思います」
「…お前、朝から下ネタばっか言うんじゃねーよ…。…分かったから帰れ」
「はーい。では、先輩。また会いましょうね」
櫻子は名前にウインクをしながら声をかけると、名前は櫻子そのものが恐怖になったようで、再び悲鳴をあげた。
櫻子の姿が消えた事に気付くと、名前はその場でむせび泣いた。土方は背丈を合わせるようにしゃがむと、申し訳なさそうな声で声をかける。
「あー…その、悪かった。こんな長くなるとは思わなかった」
『…フッ、もう、良いんですよ土方さん。悪いのはあの雌豚二人ですよ…鬼畜ですよアレは…。もう一週間分の汁を出した気がしますよ、フフフ』
「おい名前、落ち着け。な?ちょっと落ち着こう。女が言っちゃいけねーこと言ってんぞ」
『…なんか、この屈辱を誰かに愚痴りたい。下ネタ大好きな男にしか興味ない女とか、オカマに』
「…おう、そうだな。お前自身が壊れる前に愚痴って来い」
『…そうですね。ちょっと吉原行ってきます』
「……は!?」
『吉原なら下ネタオッケーだし尻軽女ばっかりでしょう。…では、土方さん。お元気で!』
「いや名前待て、吉原だと悪化…!」
土方が引き留めようとしたが、その時には遅かった。名前はフラフラと歩きながら吉原へ向かって行った。そんな彼女を見ながら、土方は呟く。
「…吉原に紀欄いっぱい居んのに…大丈夫か、アイツ」
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