女兎が啼く | ナノ
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「えッマジか!? 紀欄なのお姉さん!!! マジかよ初めて見たわ!!」

『え…いやその、違うんです。紀欄って言っても超ヘボくて、マグロなんですよマグロ』

「いやいや、名前さん、あんあん喘いで感じてたじゃないですかィ」

『きッ貴様ァァァァ!あんあんも言ってな…。…もう黙れ!言うな!黒歴史なんだよアレは!』

「耳だけであんなに感じてイくなんてもう俺ァビックリして」

『沖田ァァァァァ!!! もう黙らんかコラァァ!!!』

「へぇ〜耳だけでイっちゃったんだ」


へぇ〜、ふ〜ん。といった声を出しながら白髪は私の顔や体を舐めるように見てくる。ヤバイ、まずい。ここでこの人と帰っては私が危険だ。
そう頭の中で赤信号が出たので、私はクルッと体の向きを変えて歩いた。


「どこ行くんですかィ」

『えっと、帰るんです。では明日!シーユー!』

「俺の家ソッチじゃないけど名前ちゃん」

『えッ…。そ、そうでした。じゃあシーユー』


慌てて再び向きを変えて暗い夜道を歩き出す。というかかなり手錠邪魔だな、なんて思いながら。後ろから走ってくる音に気付き、後ろを見ると白髪が居た。


『!? だ、駄目ですよ!こんな夜道に襲うなんて!変態!不審者!』

「いやいや違ーッて!確かにさっきは興奮したけれども!沖田がどうであれ、無理に襲うのは良くねーし。お互い仲良くなってから…」

『ヤるの前提なんですかソレ!?』

「えっヤらねーの?だって紀欄だし」

『紀欄だから何だってんですか!ていうか紀欄言うな!禁句ワードですよそれ!』

「そうなの?でも俺、一度紀欄と一発してみたかっ」

『紀欄言うなコラァァァァァァ!!!!!!』


一応ツッコミということで彼の頭を思いっきり叩いた。痛いという声が聞こえたが、空耳だろう。気にしない気にしない。

先程までいた沖田という男のプレッシャーがなくなり、重かった肩は軽くなった気がした。
白髪野郎さんに私は微笑んだ。


『…まぁ、お兄さんが話を合わせてくれて助かりました』

「ああいいよ、礼なんて。それより…何かあったのか?真選組の奴らと」

『いや大したことは別に…。ちょっと捕まって、明日来いって言われまして…まさかの送ってくって言われたので、ヤバイなと』

「何でやべーの?」

『私住む場所なくて…正直にないって言ったら何だか真選組に居ろって言われそうだなと思って…。まぁ、悪魔で私の予想ですけどね』

「いやあの沖田の目は本気だったわ。ありゃ完全にお前狙ってたぞ」


狙っていた…?それが本当ならばすごく恐ろしい。あの男危険だわ。それ聞いた瞬間鳥肌がすごかったんだけど。


『怖いですね…。…そう考えるとお兄さん本当に有難うございます』

「…おー。つーか俺はお兄さんじゃなくて、坂田銀時だから。もう名前で呼んじゃっていいから」

『銀時さん?分かりました!』

「…いややッぱ、待って、銀ちゃんで頼む」

『フフッ、何ですかその要望…。じゃあ、銀ちゃんで行きます。私は名前と言います。よろしくお願いします』

「…ああ、宜しくな、名前」


銀ちゃんは笑いながらそう言って、私の頭を撫でた。優しそうな人だな、ちょっと変態っぽいけど。と、銀ちゃんに対してそう思った。


私達が銀時の家に着いたのは20時を回った頃だった。
二階建ての家を見て、私は言う。


『あ、此処ですか?銀ちゃん家って』

「…ちょっとあの名前。銀ちゃんって呼ばれるのは凄く興奮するし今だけでもドキッと来ちゃったんだけどさ」

『ええ!?来ちゃってたんですか!?』

「来ちゃってた。じゃなくて、敬語止めろよ。何かお前敬語似合わねェ」

『え〜そうですか?じゃあ、変えますね。…えっと、銀ちゃん家って此処なの?』

「…いや待ッて、何でだろーな俺。お前に名前呼ばれる度にドキッて来るんだけど、名前俺の心に矢でも飛ばしてる?」

『飛ばしてないよ!あ、ていうかあの銀ちゃん。私ここまで来たけど帰るね。沖田さんからの呪縛から解き放してくれて有難う』

「えっ、何で?お前帰る場所ないんだろ?」

『いや、大丈夫です。ネカフェにでも泊まってきますよ』


私は苦笑いしながらそう答えた。実際金は持っているので泊まる分にしては大丈夫なのだが、この夜道をまた歩くのは怖い。
といっても、銀ちゃんの家に泊まる気はない。泊まれば明らかにロクな事が起きないだろう。


「いや、名前。暫く泊まってけよ俺ん家に」

『いや何ていうか何かしそうだし遠慮しとくよ』

「何もしないよ!? いや、何かは…。いや、何もしない。泊まってきなさい」

『え〜でも二人っきりでしょ?何かするよ絶対!』

「いや二人じゃねえって。女のガキが一人いる。もう一人男のガキの方は姉ちゃん家に住んでる」

『あ、そうなんだ?じゃあ泊まってく!お言葉に甘えて!』

「おーおー。そうしろ。ただまァ、女のガキが神楽っつーんだけどよ、ちょっと口が悪い部分があるからさ。そこは甘く見てくれや」

『あ、オッケー。住ませてくれるだけでも有難いよ!』


私は微笑んで言った。銀ちゃんは何故だか顔を赤くしていた。


『ん?銀ちゃん?』

「…チッ。(〜〜っ、笑顔コイツ可愛すぎンだろ!俺の理性保てっかな…。)」

『え、なんで舌打ち?』

「別にぃ。ほら早く入れよ」

『え、うん』


銀ちゃんに背中を押され、私は二階にある銀ちゃんの家の扉を開けた。



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