40万打部屋 | ナノ

限界突破!

中学のときからだった。
サボには恋人がいて、まだ中学生だというのに婚約までしていた。
それは兄弟のエースもそうで、二人とも校内では目立っていたから余計噂が広がるのが早かった。
恋人同士で廊下を歩けば知らない生徒からも冷やかされていたが、恋人大好きなエースにはきくわけがない。
サボも中学生にしては落ちついていて、全て笑って流していた。
しかし、サボの恋人である名前は思春期真っただ中もあり、いつも顔を赤く染め俯きながら歩いている。
先輩たちや友達からからかわれたりするのも好ましく思っていない。
でもサボと一緒にいたい。だから周りの目を気にしないよう取り繕っているのだが、


「さ、サボくん。少し距離置かない?」


限界がきたようで、疲れた顔でサボに相談していた。
放課後の教室で、特に何をするでもなく会話をしていたときの出来事。
名前のいきなりの発言にサボは一瞬間を置いて、瞬きを数回。


「俺のこと嫌い?」
「ち、違うよ!嫌いになれないよっ…」
「じゃあ何で?」


サボのことは大好きだ。早く結婚したい願望もある。
だけど、友達にからかわれたり、先輩から変な目で見られたり、冷やかされたするのは好きではない。


「は、恥ずかしいことも言われて…!」


性に対して敏感な時期だ。
男子に一番冷やかされたり、噂されるのが嫌い。と珍しくハッキリ言う名前。


「ごめんな名前。そこまで悩んでたなんて」
「ううん、サボくんは悪くないよ…。ごめんなさい」
「名前も悪くないよ。だからさ、泣きそうな顔しないで」
「…ごめん、なさい…!」


困ったように笑いながら名前の頭を撫でてあげると、目に溜まっていた涙がポタリと机に落ちる。


「でもね、俺は名前と一緒にいたい。名前が好きなんだ」
「私もサボくんのこと好きだよ…。大好きだよ…!」
「じゃあ関係ねェよ。一緒にいよう」
「……でも…」
「周りが気にならないほど愛する自信がある。俺だけしか見れないようにしてあげる。周りも潰しとくからさ」
「…つぶす?」
「ああ、何でもねェ。だからさ、俺の隣にいてよ。名前がいねェと力湧かねェし、名前を触らないと生きてる実感がない」
「そんな…」
「大げさって思った?それほど名前のことが好きなんだ…」


名前の手を握って、眉をしかめて笑うサボに胸がギュッと締めつけられた。
サボが自分のことを大事にしてくれてるのは知っている。いつも守ってくれてるのも。
エースや周りの男子に比べて大人っぽく、何をしても優秀。それでいて広い心で自分を受け入れてくれる。
そんな、いつも余裕なサボが名前の言葉で弱気になっている。
不謹慎かもしれないが、サボには自分が全てなんだ、愛されてるのだ。と実感してしまった。


「ごめんね、…ごめんねサボくん」
「名前…」
「私、…凄く嬉しい…。サボくんが好き…!」
「うん、俺も好き」


いつものように笑って名前の頬にキスをすると、名前も笑う。
ちゃんとしたお付き合いをしていこう。だからキスは高校生になってから。と約束したのだが、名前の笑顔を見たら我慢なんてできそうにない。
サボだって思春期真っただ中。


「名前」
「なに?」


身を乗り出して名前の唇にキスをしようとした。


「おいサボー。約束破る気かよ」
「え、え、エースくんッ!?」


が、ギリギリのところで教室の入り口に立っていたエースに止められた。
名前が驚いて席を立ち上がり、反対にサボはイスに座る。


「……悪い、エース」
「それは名前に謝れよ」
「ごめん、名前。約束破るところだった」
「え?……あっ…!いや、うん、…嫌じゃなかった…よ?」
「おい名前。そういうのサボの前で「名前、ちょっと待っててね」


笑顔を作って、エースの首根っこを掴み、教室から出て行く。
数分も経たないうちに帰ってきたのはサボのみ。


「あれ?エースくんは?」
「彼女と帰った。ところでさ、ずっと聞きたかったことがあるんだけど…」
「聞きたかったこと?」
「名前はエースのことガキで、本能に忠実な動物っぽいって言ってたよね?」
「……まあ間違ってはないけど…。そんな言い方はしてないよ…」
「んで、俺のことは紳士で優しくてクールだって思ってるよね?」
「う、うん…。…あの、それがどうかした?」


ニコッとまた笑顔を作って、名前が座るイスの背もたれと、机に手を置き、逃がさない空間を作る。


「ごめん、それ逆」
「……逆?」
「本能に忠実なの俺なんだ」


驚く名前にキスをして、悲鳴を呑みこんだ。





燕さんへ。



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