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事件発生

「うし、じゃあ行こうぜ!」


エースのはつらつとした発言に、名前以外の大人組は呆れたように溜息を吐いた。
嬉々とエースに賛同しようとした名前だったが、大人組の溜息を聞いてそれぞれの顔を見て、口を一度閉じた。


「おいおいエースくん、聞いてなかったのか?超凶悪な動物がいるんだぜ?何でわざわざそんなとこに行かねェとならねェんだ…」
「だからだろ!すっげェ面白ェじゃん!」
「わんぱく小僧だな…」
「どうにかしろよい、サッチ」
「俺がかよ!」
「名前だって冒険してェって言ってんだし、いいだろー!?」


ブー!と名前より子供のように頬を膨らませ、「行こうぜ」と何度も誘うが大人組は絶対に首を縦に振らなかった。
名前もエースと一緒になって抗議してみるが、いい顔はしない。
できるなら言うことを聞いてあげたいが、島の行き場所を決めるのは船長の白ひげだ。
それに、そんな凶悪な島に行って名前が危険なめに合ったりでもしたら大変だ。
特にマルコとイゾウが必死で、「ダメだ」の一点張り。


「でもお二人の言う通りですよ。本当にあの島は危ないんです」
「大丈夫だって。襲ってきたら焼けばいいんだろ?」
「そうですが…」
「あーもう!お前らに言っても意味ねェ!名前、オヤジに言ってみようぜ!」
「オヤジ殿にですか?」
「オヤジなら解ってくれる!」


鼻息荒く立ち上がり、名前の腕を強引に掴んで海へ…ストライカーへ向かう。
名前を乗せ、すぐにエンジンに火をおくるとあっという間に沖合に停泊していたモビー・ディック号へとたどり着く。
マルコは不死鳥へと変身し、ストライカーを追いかけた。暴走したエースは厄介なのをよく知っている。
空を飛べないサッチとイゾウは急いで小型の船へと乗り込み、島をあとにしようと、一緒にいた男に声をかけた。


「悪いな、慌ただしくて」
「いえ」
「エースは本当猪突猛進だよな…。名前ちゃんを使ってオヤジにお願いしたら許さねェぞ…!」
「あの」


見送りの男が俯いたまま二人の動きを止める。
サッチとイゾウが振り返ると、顔をゆっくりあげ、口端をあげて笑顔を作る。


「もしあの島へ行くなら、あるものを取ってきてほしいんです」
「あるもの?」
「はい。少し前に大事なもの…青い刃の短剣を落としてしまったんです。夏島か冬島のどちらかに落ちてると思うので、もし見つけたら持って帰ってほしんです」
「……へェ、あんた強いんだ」


イゾウの鋭い視線に男はやはり笑ったままで、肯定することも否定することもなく、沈黙を続けた。


「強いなら自分で見つければいいんじゃねェの?」
「すみません、俺はあの島に入れない理由があるんです」
「理由?」
「―――ああ、お仲間が呼んでますよ。どうやら少し慌ててるようですが?」


男の言葉にサッチとイゾウが振り返ると、ストライカーに乗ったエースが戻って来た。
しかしエースの足元には名前はおらず、血相を変えたエースが一人乗っているだけ。


「どうしたエース?マルコに殺されかけたのか?」
「オヤジがッ…!オヤジが倒れた!」
「「なに!?」」


エースの言葉に二人は身を乗り出し、詳しく問いただすも、エース自身が混乱しているため状況がよく理解できない。
すぐにオールを持ち、モビー・ディック号へと船を漕ぐ。


「(あれ、あの男いなくなってやがる…)」


夕日が地平線の向こうに消える時刻。
急いでオールを漕ぎながら浜辺を見るサッチは、先ほどまでいた男が消えていることに気がついたが、すぐに意識は白ひげの安否に切り替えたのだった。



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