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とある島で休息

「リゾートだ!」
「リゾートだっ」
「海だ!」
「海だっ」
「つーことは…?」
「遊ぶべし!」
「その通り!」


親指を立てながらウインクをする白ひげ海賊団四番隊隊長サッチに、その末っ子・名前はニヒッ!と笑った。
二人揃って海へ走って向かい、膝が浸かるところで海水を掛け合ったり、サッチに投げられたりと海でしかできない遊びをして楽しんでいた。


「なんか前にも見た光景だな」
「ああ、名前の水着姿を思い出したよい」
「それは忘れろ!」


楽しそうに遊ぶ二人を浜辺で見ているのは白ひげ海賊団一番隊隊長マルコと、二番隊隊長エース。
能力者である二人は海に嫌われているので入ることはできず、ただ羨ましそうに名前を見守っていた。


「にしても平和だな…」
「ああ、いいことだよい」


足を伸ばし、両手を後ろについて空を仰ぎ呟くと、マルコもほんのり笑みを浮かべて頷いた。
地平線の境目が解らないぐらい真っ青海と空が眼前に広がる。目に入るのは妹とサッチと沖に停泊してあるモビー・ディックのみ。

今回、白ひげ海賊団がやって来たのは綺麗な海と綺麗な砂浜が広がる島。
しかし、物資を補給できるほど大きくないのですぐに出発するはずだったが、あまりの綺麗な海と砂浜に名前が「遊びたい!」と目をキラキラさせながら船長である白ひげ、エドワード・ニューゲートに頼みこんだ。
勿論すぐに許しを出した白ひげに、近くにいたサッチやエースも喜び、短い時間だが島に遊びに降りた。そのお目付け役としてマルコも一緒に降りる。


「マルコさーん!俺、今足の届かないところにいるんですよー!」
「気をつけろよい」
「はーい!」
「サッチ。何かあったらテメェが死ね」
「なんだよその脅し!怖ェよ!」


今日も変わらず名前のみに過保護なマルコ。隣に座っているエースも笑うだけで、止めようとはしない。彼は無自覚シスコンだ。


「……なァマルコ」
「どうした?」
「名前の奴、胸大きくなったよな」
「は?」
「見てみろよ。最初に比べて成長してるだろ」
「……」
「確かに見ろって言ったけど、目ェ細めてガン見しろとまでは言ってねェ」
「確かに大きくなったねェ…。成長期だしな」
「どんな女になるんだろうな。きっと俺そっくりになるぜ!」
「いや、名前は俺に似て思慮深い女になるよい」
「ははっ、それはねェって!」
「エースこそねェよい」
「んだと!?」


過保護者とシスコンによる名前の将来トークをしている一方で、当の本人はサッチと楽しく海で遊んでいた。
何度も投げられ、そのたびに仕返しをしようとサッチに抱きつき、浮力でサッチを持ちあげようとするが、そうはさせてくれない。
頑張る名前を笑いながらまた投げ飛ばすサッチ。
だけど足が届く場所にしか投げ飛ばさない。マルコに脅されたからもあるが、可愛い妹を本気で泣かしたいとは思っていないサッチは今日もいいお兄ちゃんっぷりを披露していた。


「まだまだだな、名前」
「げほっ…!も、もう一度…!」
「おう、どんとこい!」


海水で崩れたリーゼントはオールバックにされているため、ニッ!と笑う顔も少し違和感。雰囲気も変わってくる。
最初は見慣れないので戸惑っていた名前だったが、遊んでいるうちに慣れた。


「腰入れろ!」
「ぐうう…!」
「ダメだな。もっと鍛えてから俺に挑め!」
「わっ!」


隊長を務めているだけあって、水中で体当たりされてもバランスを崩されることがないほど足腰を鍛えている。
頭を抱えてわざとらしく溜息をはいたあと、再び名前を海へと投げ飛ばした。
しかし、飛ばした場所が悪かった。
ドボン!と水柱が立ったあと、その場に立っていたのは名前の怖い怖い保護者様。


「…イゾウ様…」
「見るに耐えかねて来ちゃった」


彼女が彼氏の家に遊びに来たときの「ごめん、会いたかったから来ちゃった」のノリで黒い笑顔を浮かべるイゾウに、サッチの口端はヒクヒクと笑う。
海中にいる名前の両脇を掴んで、立たせてあげるイゾウに、名前は「イゾウさん!」と嬉しそうな声をもらした。


「名前ちゃん大丈夫?」
「え?あ、はい。サッチさんと戦ってるんですけど、なかなか勝てないですよね…」
「名前ちゃんサッチに勝ちたい?」
「はい!俺もサッチさんを投げたいんです!」
「じゃあ俺も手伝ってあげる」
「え、でも…」
「それぐらいのハンデ、いいよね?」


横目でサッチを睨みつけると、サッチは何度も首を縦に動かした。
動かしてすぐに「しまった!」と後悔する。
もう逃げてしまいたい気持ちでいっぱいのサッチだが、ここで逃げたらそれ以上の怖いことが起こるのを知っているため逃げれない。


「じゃ、ジッとしててくれる?」
「よーし、覚悟ですサッチさん!」


無邪気に笑う名前と、黒い笑みを浮かべるイゾウにサッチは抵抗する力を失った。
イゾウの乱入により名前がサッチを海へ投げることに成功し、サッチの背中に乗って沖へ出たりと楽しむことができた。
サッチは隣にいるイゾウのせいで沖に名前を置き去りにして遊ぶことも、溺れたフリをして名前をからかうこともできず、涙を流していたとかいないとか。
多少の時間が過ぎたころ、浜辺にいる二人が名前と遊べないので「早く帰ってこい!」とうるさく喚いていた。
名前を一人占めしていたイゾウはそのたびに舌打ちをする。
今さっきまで(名前を虐めて)楽しかったのに、今は怖くてたまらないサッチ。


「サッチさんは優しいです!」
「んだよいきなり…」
「だっていっつも遊んでくれるもん!」


だけど、末っ子の嬉しそうな顔を見て「まあいいか」と笑うのだった。


「調子にのんなよ、サッチ」
「心得ています、イゾウさん」




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