SWパロ | ナノ

VSドリルモグラ

太陽はすっかり昇っていた。
正午とまではいかないが、いつもだったら甲板の掃除をしている時間帯。
だけど今日は違う。仲間と合流するため、白ひげを助けるために名前は一人で森を歩き続けていた。
秋島に白ひげと男がいることは解っている。
しかし草に足をとられ、動物や昆虫からは身を隠しながら進むのにはどうしても時間がかかってしまう。


「誰でもいいから早く合流しないと…!」


武器は持っているが、サッチやマルコが苦戦する相手に自分が勝てるわけがない。
手には小刀を握り、草をかき分ける。時々警戒するように後ろや空を確認し、慎重に進む。
そのせいでなかなか次の島に進まないのだ。


「誰かいないかな…」
『そこ右』
「え?」


名前の独り言に誰かが答えた。
周囲を見渡すも人影なんてなく、名前は「幻聴かな?」と首を捻ったが、『そこ右』と今度は脳に直接喋りかけられた。


「だ、誰でしょうか…」
『そこ右』
「あのー…」
『右』


同じことしか喋らない声に、名前は困りながら言葉通り、右に進んだ。
「ここからどうすれば?」と質問するも、声はそれ以上名前に喋りかけることはなかった。


「何だったんだろ…。やっぱり幻聴なのかな?」


足を止めて後ろを見つめる。何だか後ろにいる気がしたが、目を凝らして見てもいるはずはない。
すると、前方より草木をかき分ける音が名前に近づいてきた。
神経を研ぎ澄ましていた名前は銃と小刀を構え、敵に備える。
音が近づくたびに心臓は高鳴り、腕も小刻みに震える。
逃げようにも足が動かなくなっていた。


「お、名前ー!」
「ハッ、ハルタさん!?」


草むらから飛び出してきたのは顔や服を泥と血で汚したハルタ。
名前に斬りかかろうとした剣をギリギリのところで止め、笑いながら鞘へ戻す。
ビックリしたの、剣を寸止めされたことに腰が抜けた名前は地面にへにゃりと座りこんだ。


「よかった…合流できた…」
「………あれ、何で名前がいるんだァ?」
「それはですね…」


名前が体験したことを簡潔に伝えると、ハルタは嬉しそうに笑って名前を抱きしめた。


「オヤジと一緒に連れて行かれて心配してたんだぞー!」
「お、俺も怖かったです…!」
「でもオヤジを助けるためにまた来たんだろー?じゃあ頑張ろうぜェ!」
「はい!」
「ほら、手ェ」
「迷子にならないよう気をつけますね!」


ハルタが手を伸ばし、名前がしっかりと握る。
ようやく仲間に合流できた名前は浮かれ気分で秋島を目指そうとするのだが。


「名前ー!こっち!こっち行ってみようぜェ!」
「え…。でも秋島はあそこですよ?」
「こっちのほうが近道なんだってー!」
「…そう、ですか?」
「俺を信じろよなー」


自信満々に草の根をかき分けると、口周辺がドリルになった茶色い動物と遭遇した。
ハルタは「お!」と嬉しそうに、名前は「え!」と悲鳴をもらす。
その瞬間、茶色い動物がドリルを高速回転しながらハルタに突っ込む。
すぐに名前の手を離し、剣でドリルを受け止めるが、力では勝てそうになかった。


「ハルタさん!」
「名前、こいつなんの動物だと思うー!?」
「今このタイミングでその質問はおかしいです!」
「これ絶対ェモグラだよなァ!すっげェなこの島ー!今さっきから見たことねェ動物とばっか戦ってんだぜェ!」
「えええええ!?」


ペロリと口端を舐め、掛け声とともにドリルを剣で弾き返した。
茶色い動物、モグラは離れた位置に飛ばされたが、そのまま地面へと潜る。


「名前、ちょっと危ねェから下がってろォ!」
「で、でもどこに…!」


慌てる名前をお姫様抱っこで担ぎ、太い幹の木の枝まで飛んで名前を下ろす。
困惑する名前の頭に手を乗せ、ぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる。
先ほどと変わらない無邪気な笑顔のハルタに、名前はハルタの名前を呼ぶ。


「だいじょーぶ!俺に任せろォ!」
「…俺に何かできることは?」
「死ぬな!」
「わ、解りましたっ」


それだけ言って木から飛び降りた。
地に足をつける前にモグラが地中から飛び出し、ドリルがハルタを襲う。
しかし、空中で身体を捻ったので頬をかすめた程度。それでも血が滲んでしまい、名前が「ハルタさん!」と声をあげた。


「妹の目の前じゃあ格好悪いとこ見せれねェなァ…」


着地すると同時に身体をさらに捻って飛び出したモグラの身体、ドリルではない柔らかい部分に一閃。
ドリル以外の場所は普通の身体だったらしく簡単に斬ることができ、血がパッ!とハルタの顔を汚した。
一瞬にして勝敗が決まり、地面に寝転ぶハルタは呑気に名前に向かってピースサインを送った。


「もー…」
「格好よかっただろー?」
「格好いいとか―――ハルタさんッ!」


真っ二つに斬り、倒したはずのモグラ。しかし、ドリルの一部がハルタに向かって襲いかかる。
死角のせいで見えなかったドリルがハルタの身体を突き通した。


「はっ、はっ…!」
「…やるじゃん、名前」


はずだったが、名前が木の上から小刀を投げ、軌道を変えた。
そこで力尽きたドリルを見て、ハルタはやっぱり呑気に笑う。


「大丈夫でしたか?」
「おー。名前のおかげでなー!」
「修行してたよかったと心底思いました…」
「だなー」


ははっ!と笑ったあと身軽に起き上がり、名前がいる木の枝まで飛んで腰を下ろす。
「偉い偉い」と頭を撫でてあげると、名前は腕で目をこすった。


「何で泣いてんだよー」
「だって、怖かった…です」
「あー…そっかー…。名前は戦いっての初めてだっけェ?」
「はい…。モビー・ディックが襲われたことないし…」
「そうだよなー。ん、ごめんな名前ー」


今度は申し訳なさそうに笑って頭を優しく撫でてあげた。





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