それぞれの道のり いつもの癖で帽子を深く被り直そうとしたエースだったが、名前に渡したままなのを思い出し自嘲に似た笑いをこぼした。 「参ったな…」 先ほどまで自分達を追いかけていた恐竜の肉を貪るエースは、これからどうしようかと考える。 しかし、ご飯を食べ始めると眠くなるのがエース。 次第にウトウトと首が船を漕ぎ始め、いつの間にか肉にかぶりついたまま鼻ちょうちんを浮かべるのだった。 「あのバカ、何でもかんでも力任せにしやがって…!」 火拳に巻き込まれないよう、その場から離れたサッチだったが、逃げた場所が悪かった。 刀を持つ猫にぶつかってしまい、猫は抜刀。その場で戦闘が始まった。 二足歩行もでき、刀も操れる猫に最初は戸惑っていたが、刀と剣をまじあわせている間に本気になっていた。 二刀でも捌ききれないほど速い猫の刀に、頬を軽く斬られる。 伸ばされた猫の腕を掴み、片方の手で顔面にパンチを食らわせ、戦闘終了。 斬られた場所を親指で拭いながら息を整え、このきっかけを作ったエースにぶつぶつと文句を言っていると、フッと影が照らす。 いい予感などしないサッチがゆっくり視線をあげていくと、片目が潰れた二足歩行の大きな猫が目に入った。 「もしかして…。息子さんですか?」 サッチの言葉に大きな猫がゆっくり頷き、同じぐらい大きな刀をサッチ向かって振り下ろした。 「勘弁してくれ!いくら俺でもこんなの倒せれるか!」 ギャー!という悲鳴をイゾウが聞きつけ、「サッチか…」と呟いて止めた足をまた進めた。 エースの火拳から逃げきれたのはいいが、仲間とは離れ離れになってしまった。 だからと言って仲間を探す時間などない。 大事な船長と大事な妹が連れ去られてしまったのだから。 銃を握ったまま秋島へと向かう。 秋島はこの島の中心。山になっているからどこにいようが目に入る。目印を見失うことはない。だから生きていればきっと会える。 イゾウは仲間の強さを信じていた。 「オヤジと名前ちゃんを誘拐したこと、俺が身を持って後悔させてやるっ…!」 というより、ただ単に早くあの男を倒したくて仕方のないイゾウだった。 「変身できりゃあすぐなんだがな…」 秋島を見上げながら呟くのはマルコ。 恐竜の群れから逃げきることはできたが、仲間と離れてしまった。 イゾウ同様仲間の心配はしていないが、先ほどのサッチの悲鳴が少し気になる。 それでも助けに行くほどではないと判断したマルコは秋島を目指して歩き続けた。 いくら進んでも縮まらない距離に、一度不死鳥へ変身してみるが、やはり鼻の奥が痛くなり、すぐに人間に戻ってしまう。 「なんだってんだい…」 人間に戻るとそれもなくなる。 疑問を抱きつつも歩みを進め、少しすると名前が目の前に現れた。 一瞬言葉に詰まったが、すぐに駆けだすと名前は「コン」と獣のように鳴いた。 走るのを止めるも、勢いは止まらない。そのまま名前に突撃しそうになったが、シュッと何かが空を裂く音がし、無理やり身体を止める。 かすめた場所を見ると、服が刀で斬られたように破かれていた。 名前は変わらず「コン」と鳴いている。 「化け狐かよい」 名前の後ろから白い尾がゆらゆら揺れている。 「コン」と鳴くと尾が鋭い針へと変わり、マルコに襲いかかる。 その場から離れ、名前に似た動物と距離を取るも、マルコは冷や汗を流した。 「やりにくい敵だよい…」 サッチとマルコが戦闘中、ハルタは砂丘を歩いていた。 恐竜と一緒にエースに吹っ飛ばされ、海へと逆戻りしたハルタはこれからどうするか悩む。 白ひげと名前が心配だが、見たことのない生き物達やドキドキハラハラするスリル。 今さっきだって、怖かったけど楽しかった。 思いだすだけで再び胸は高鳴り、その場で笑いだす。 「イゾーとマルコがいるしなー。ちょっと冒険していくかー!」 楽しいだけじゃない。ここの動物達と戦えば、きっと自分の力にもなる。 剣を握り、砂丘を駆けだした。向かうはたくさんの動物がいる森。 「よォーし、斬って斬って斬りまくるぞー!」 こうして、バラバラになった五人はそれぞれの道を歩き始めた。 ( ← | → ) ▽ topへ |