25万打部屋 | ナノ

慰安旅行(前編)

部署で慰安旅行へ行くことになりました。場所は海です!
……大まか過ぎて詳しい事情とかは解んないけど、遊べるので楽しみです!


「というわけで行ってきます」
「おお、行ってこい」


それなのに。一泊二日で丸一日会えないって言うのにマルコさんはいつもと変わらない様子で新聞をめくる。


「マルコさんは寂しくないんですか!」
「うるせェのがいなくて「私は寂しいです!」……人の話は最後まで聞けよい」


旅行は行きたい。海で泳ぎたい。仕事を忘れてたっぷり遊びたい!
だけどマルコさんがいないのは寂しい!それなのに何でマルコさんは……何でっ…!


「でもそんなマルコさんも大好きだーっ!」
「はいはい」
「マルコさんも行きましょうよ!」
「無理」
「ちぇー…。じゃあ水着選んで下さい、水着」
「何でもいいよい」
「旦那なら「露出を控えた水着にしろい」って言わないんですか?」
「名前の好きな水着を着ればいいだろい。そこまで口出すほどじゃねェよい」
「むー…」


マルコさんと結婚できて嬉しいけど、もっと欲を言うなら束縛してほしい。マルコさんの愛で束縛してほしい。
まあ無理なのは知ってるし、そういう人じゃないのも知ってる。
だから諦めてご飯を口に運ぶと、マルコさんは新聞をたたんでチラリと私を見る。


「まァ…。羽目外しすぎるなよい」
「うん!」


不器用なマルコさんの気遣い。
一緒に海へ行けないけどこれだけで元気になれる私はきっと単純バカだ。マルコさんバカ。ええ、本望ですとも!





慰安旅行当日。
マルコさんを無理やり誘い、新しい水着を購入!
恥ずかしがってたマルコさんは格好いいけど、可愛かったなー。あとから怒られたけど。
その水着と一泊分の荷物をキャリーバックに詰め込み、バスで移動すること何時間。
隣に座るサボくんと旦那自慢、嫁自慢をしながら外の景色を楽しんでいた。
その後ろ、バスの一番後ろではエースくんが横になって大きなイビキをかきながら寝ている。彼はいつだって、どこだって寝れる能力を持っている。


「あ、海だ!サボくん、海だよ海!」
「おー、海だな」
「海か!?」


トンネルを抜け、山を越えて見えてきたのは真っ青に光る海!
空と海の境界線が見えないぐらい綺麗で、私とエースくんの目はキラキラと輝く。
というかエースくん起きるの早すぎ。


「エースは海が好きだからな」
「サボもだろ!」
「まァな!」
「海はいいよねェ。楽しくなってきた!」
「今年こそ泳げるようになってみせる!」
「頑張れよ、相棒」


小さいころは普通に泳げていたらしい、エースくん。
だけど高校生になり、泳ぐ機会がなくなってから泳げなくなったしい。
普通小さいころから泳いでいたら身体が覚えてて泳げなくなるなんてないはずなんだけどなー…。
でもエースくんが溺れるところを見たからなんとも言えない…。
そう言えばマルコさんも泳げないんだっけ?なんか力が抜けるとかなんとかって言ってた。よく解んないなー。


「ほら名前、降りる準備しろよ」
「え、もう着いたの?」
「オヤジのプライベートビーチなんだぜ!」
「そうなの!?」


さすがオヤジさん…。
でもオヤジさんも泳げないって聞いた…。のに、プライベートビーチを持ってるなんて凄い。海が好きなのかな?


「うっわー…凄い…」
「さすが社長は違うよな」
「今日はバーベキューなんだぜ!」


バスを降り、目の前にそびえ立つ大きな家。家?別荘って言ったほうがいいのかな?
この旅行を仕切る部長について行きながら中に入るとやっぱり外観同様広かった。


「俺何度か来たことあるから解らなかったら聞いてくれ」
「お前どんだけ社長と仲良しなんだよ」
「世話になったからな!」
「それは今もだろ」
「ちげェねェ!」


部屋を振り分けられ、夜まで自由行動。
この部署に女は私しかいないから一階の部屋を丸々一つくれた。ちょっと寂しい…。
夜はエースくんが今さっき言ったようにバーベキューをするから、それまで海で泳ごうと思う。


「サボくん、エースくん。一緒に海行こうよ!」
「おう!競争しようぜ!」
「エース、お前泳げねェだろ」
「浮き輪持ってきたから大丈夫!」


二人と約束して、急いで部屋に戻って水着に着替えた。
浮き輪も用意して、貴重品は……ま、いっか。あ、でも携帯は持って行こう!


「お待たせ!」
「よし、行くか!」
「先に準備運動しろって」


玄関の反対側はビーチに降りれるテラスで、そこから飛び出すエースくん。
すぐに砂丘の熱さに悲鳴をあげてたけど、何だか楽しそうに笑っている。エースくん遊ぶの好きだもんね。


「うし、飛び込むか!」
「あ、ちょっと待って!」
「どうかした?」
「絶対溺れると思うから写メ撮ろうと思って」
「あ、それあとから送って」
「任せて」
「おい、俺が溺れるなんて解んねェだろうが!見てろ!」


少し離れた場所に小高い崖があり、そこに向かって走り出すエースくん。
私とサボくんも近づいて写メを撮る準備をする。


「でりゃッ!」


勢いよく飛んで海へと落ちるエースくん。
格好よく飛び込んだけど、そこまで格好よくなく、結局お腹を打って海に沈んでいく。お約束のエースくんに思わず噴き出して笑ってしまった。


「……浮いてこねェな」
「あ、手が出た」
「で、また沈んだ」
「アハハハハ!」
「しょうがねェ兄弟だな…」


ちゃんと写メとムービーを撮影し、私は笑い転げた。
サボくんは呆れながらエースくん救出へ向かい、ぐったりとしたエースくんを砂丘に投げ捨て一発頭を殴る。
私達に続いて部署の仲間達もやってきて、今までの事情を説明してムービーを見せると皆も私同様笑い転げたのだった。







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