25万打部屋 | ナノ

会いたい寂しい抱きしめたい

「寂しい!」


いつもならご飯も食べ終わり、大好きなマルコさんといちゃいちゃラブラブする時間。
だけど今日はそのマルコさんがいない!
楽しくない私は大きなソファに寝転び、足をバタバタ動かす。
「暴れんなよい」って怒られたい!別にマゾヒストじゃないけど、この際何でもいいからマルコさんの声が聞きたいよーっ。


「……マルコさん…」


また出張へ出かけたマルコさん。
オヤジさんの秘書だし仕方ないけど、一か月は寂しすぎるよ!
っていうか一カ月も出張って何!?なんの嫌がらせですか、オヤジさん!


「まだあと一週間ある…」


逆を言えば、残り一週間。
くっそー…。眠くないけどもう寝ようかな。起きてても楽しくないし、寂しくなるだけだし。
よし、寝よう!マルコさんパワーがないから毎日クタクタなんだよね。

起き上がり、さっさとお風呂に入って、さっさとベットに潜り込む。
広いベットだけど、マルコさんがいないから余計に広く感じる。
……ダメだ。マルコさんのこと考えず寝よう!


「おやすみなさい、マルコさん」


前に「俺離れしろい」って言われたから、今回も電話やメールをしないようにしている。
携帯に写ったマルコさんを見て、静かに閉じる。


『ごめんな、名前。もうお前とは一緒に住めねェ』
『な、何でですか?ダメなところがあるなら直します。直しますからそんなこと言わないで下さい!』
『ガキに興味ねェんだよい』
『そんなッ…!』


………と、言う最低な夢を見た。
何も今見なくていいじゃん!
無理やり目を覚ますと天井がうつり、涙が滲んでいて揺らいだ。


「マルコさ……」


隣で寝ているマルコさんを探すけど、出張中なのでいるはずもない。
それが無性に寂しくなり、涙が頬を伝ってシーツに染みた。
もう、やだ…。寂しい、苦しい。何でもいいからマルコさんの声が聞きたい。マルコさんに抱きつきたい。
無意識に携帯を握り、電話をかけそうになった。慌てて指を離し、投げ捨てる。
声は聞きたいが、電話したらダメ。また怒られる。そしたら夢の通りになってしまう…!


「ううっ…。でも、寂しいっ…よぉ…!」


シーツを握りしめ、ひたすらその悲しみに耐える。
すると、ブーブーと携帯のバイブ音が鳴り響いた。
今はもう夜中。誰から?
涙を拭いながら携帯画面を確認すると、


「ッマルコさんだ!」


マルコさんではないか!
すぐに通話ボタンを押して耳に当てた。


「マルコさんだ!どうして?何で?!」
『どうせ寝れねェと思って電話してやった。もしかして寝てたかい?』
「寝れるわけないじゃないですか!」
『……名前、泣いてんのかい?』
「な、泣いてませんよ…!ちゃんとマルコさん離れしてます!」
『そりゃあ残念だな』
「え?」
『俺は……、――みしかった』


最初の言葉は聞こえなかったけど、何が言いたいかはすぐに解った。
その台詞を聞いた途端、私の涙腺はいとも簡単に崩壊した。


「私だって寂しいよォ!もうやだー、マルコさん早く帰ってきて!マルコさんに会いたい!寂しいよ、怖いよォ!」
『怖い?』
「怖い夢見たの!起きたらマルコさんいないし…!」
『ああ、だから泣いてたのかい』
「子供だって笑ってもらっても構いません!だけど本当にマルコさんに会いたいんです!」


涙が止まらない。鼻水も出てきた。きっと凄い顔になってると思う。
泣き声も止まらないけど、「マルコさん好きです」と、三週間分の愛をこめて告白した。
電話向こうのマルコさんは何も言わないけど、笑ってる感じがする。


『たかが出張だろい。大げさすぎるよい』
「私はマルコさんが近くにいないと死んじゃうの!」
『そりゃあ大変な病気だな』
「そう、それ!大変な病気なんです!」
『薬飲んどけよい』
「マルコさんがギューってしてくれたら治る!」
『じゃあ明日までの我慢だな』
「……明日?」
『早く帰れることになった。明日の昼には会社に着くよい』
「……ったー!明日マルコさんに会えるんですね!やった、やった…!明日楽しみにしてます!」
『それはいいが、ちゃんと仕事しろよい』
「仕事はちゃんとしてます!」
『本当かよい…。ああ、じゃあそろそろ切るから明日はちゃんと遅刻せず行けよい』
「…あれ?私遅刻したなんて言いましたっけ?」
『……。じゃ』
「あ、待っ―――切れた…」


空しい電話音に、ガックリと頭(こうべ)が垂れる。
にしても…。何で私が今日遅刻したの知ってるんだろう?メールしてないのに。
あ、もしかしてエースくんがチクったのかな?絶対そうだ!昨日仕事押し付けたから怒ってチクったんだ!


「明日文句言ってやる!」


もう一度ベットに潜り込み、隣を見る。
マルコさんはいないけど、何だか幸せな気分だ。
明日会えるかと思ったら、今さっき見た悪夢も怖くない!
次こそは幸せな夢が見れますよーに!






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