25万打部屋 | ナノ

望まない別れ話

「あ、マルコさんだ!」
「……会社ではあんま話かけてくんなよい」
「こんな広い会社でマルコさんに出会うなんて運命ですね!」
「名前、人の話は聞きなさい」
「ってか名前ちゃん!俺は無視かよ!」
「あ、(いたんだ…)お疲れ様です、サッチさん」
「あからさまな態度って逆に人を傷つけてるの知ってる?」
「すみません、サッチさん。ところで今から休憩なんですけど、マルコさんもですか?一緒してもいいですよね?」
「ダメ「いいじゃねェかマルコ。せっかく会ったんだし。ほら名前、来いよ、マルコとの熱い夜を語ってくれ!」
「え、いいんですか!?」


偶然会社内でマルコさんと出会った。
その瞬間私の周りには花が咲き乱れ、飼い主を見つけた犬のように尻尾を振りながら近づく。
マルコさんはいつものように素っ気なかったけど、無視。だって私は嬉しいだもん!
マルコさん達も休憩みたいだったので私も無理に一緒させてもらうことになった。
サッチさんはいい人だ。しかも惚気話を聞いてくれるなんて…!
腕を組んだり、引っ付いたりしたらダメだけど、ピッタリくっついて休憩室(とは言っても喫煙コーナー)へ向かう。


「……名前ちゃん、それはようするにマルコが格好いいってこと…?」
「そういうことです!もうほんとマルコさんと結婚した私って幸せ者ですよね!」
「俺はもっとこう…夜事情が聞きたかったのにッ…!」
「名前にそういうこと聞いたサッチがバカだったな」


禁煙コーナーには数人社員さんがいて、マルコさんとサッチさんを見ると顔色を変えて「お疲れ様です」と頭を下げる。
これを見ると、「マルコさんって実は凄い人なんだよね…」って実感する。
いや、凄い人なのは知ってるよ。だけど…うん、遠いなァ…。格好いいけど!


「名前ちゃん、マルコと別れたらどうすんだよ…」
「なッ…!私はマルコさんと別れません!マルコさんのこと愛してます!」
「うわー…さすが名前ちゃん。マルコバカ…」
「名前、声がでかい」
「だってサッチさんが…!マルコさんも私のこと好きですよね?別れたりしませんよね!?」
「……」
「なんとか言って下さいよォ!」


コーヒーを飲みながらチラリと私を見て、全部を飲み干す。
うわああん!離婚なんてやだよー!マルコさんと死ぬまで一緒にいるんだ!


「羨ましいなァマルコんとこの嫁はお前に夢中で」
「私の世界はマルコさんでできてますから!」
「そういうサッチんとこはどうなんだい」
「俺の嫁さん?ああ、可愛いぜ。ツンデレが酷いけどな」


アハハ。と軽快に笑うけど、少し寂しそうな感じだった。
ツンデレってなんだろ…。あんまり幸せじゃないのかな?


「この間「もう別れる」とか言ってきたから「いいぞ」って言ってやるとベッタベタに甘えてきたんだ。あんな素直になったあいつは滅多に見れねェ」
「面倒くせェな」
「名前も十分面倒くせェよ」
「え?私って面倒ですか?」
「そうは言ってねェよ。でもマルコにゃあ「サッチ、未開の地へ出張行きたいかい?」黙っておきまーす」


…私って面倒なんだろうか…。あんまり「好き」とか「愛してる」とか言わないほうがいいのかな。
実は重たいって思ってたりして。う、わ…悲しすぎる…!


「お前ら別れる芝居でもしてみろよ」
「え?」
「いきなり何言ってんだい。とうとうボケたかい?」
「お前よりまだ若ェよ!いや、人んちの夫婦ケンカほど面白いもんはねェだろ?」
「名前で遊ぶんじゃねェよい」
「マルコの困った顔が見てェんだよ」


ニヤッと笑うサッチさん。その瞬間その場がピキンと凍りついた気がした。

というわけで、何故かマルコさんと離婚するお芝居をすることになりました。
お芝居だとしてもイヤなのに、マルコさんに「やるよい」と言われ、渋々頷く…。


「さよならだよい、名前」


その言葉に身体の芯から震えあがった。
こんな言葉絶対に聞きたくなかったのに!
でも大丈夫、これはお芝居。あとからまた抱きつける。抱きついてやる!


「さ、……さよならです、マルコさん」
「ああ」
「……あの、ずっと好きです、…でした」
「俺もだよい」


自分で言ったくせに、自分の言葉にズキンと心が痛む。
芝居だと解っていても涙が目に浮かび、思わず俯く。


「その結婚指輪は捨てちまって構わねェから」
「…っひく…!す、……う、うっ…!捨てます、よォ…!」
「それから、あの部屋はお前が好きに使っていいよい。俺が出て行くから」
「そ、んなッ…の、……やだああああ!マルコさんと別れるなんてイヤー!」


ダメ、限界!無理無理無理!絶対無理!
大粒の涙を流しながら顔をあげてマルコさんに抱きつく。
すっごい苦しい。すっごい寂しい!
マルコさんが好きなのに何で別れないといけないの!?別れる気がないのに何でこんなこと…!


「サッチさんのバカー!ハゲちゃえ!」
「そういうリアルな暴言は止めろよ!俺結構気にしてんだぞ!」


泣きながらマルコさんを抱きしめると、マルコさんも優しく抱きしめてくれた。
ああ、やっぱり私マルコさんから離れられないや!


「っち、楽しくねェな…」
「可愛いだろい?」
「俺が思ってた以上にお前も名前に惚れてんのが解った」
「ハハッ」
「ごっそーさん」






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