バレンタイン夢 | ナノ

溺愛ばかりの旦那

『今から帰る!』


そう旦那のエースからメールを受信して何十分。
時間が進むごとに気分がよくなるのはエースが溺愛するお嫁さん、名前。
結婚して毎日顔を見合わせているのに飽きることなんてなく、それ以上にお互いがお互いのことを好きになる。
一時間に一回はメールをしないと不安になるほど両者ともに依存していた。


「帰ってきた!」


ドタドタと慌ただしい足音が外から聞こえ、名前は急いで玄関へと向かう。
エースが扉を開ける前に鍵を開け、両手を広げて迎える準備を整える。
鍵を閉めているのはエースに何かあったら怖いからと言われたから。
でもエースが開ける前に鍵を開けとかないと彼はドアノブを壊し、中へ入ってくる。
何度も壊し、何度もアパートの大家さんに怒られては隣に住むエースの兄弟、サボにとり繕ってもらっている。


「名前ッ!」
「エース、お帰りなさい!」


今回も乱暴に扉を開け、開けると同時名前を呼んで勢いよく名前を抱きしめた。
毎度毎度激しいお帰りだが、依存し合っている二人には丁度いい。


「やっと会えた!名前に会えねェ間すっげェ辛かった!」
「私も!早くエースに会いたくて会いたくて…。今日もお疲れ様、愛してるよ!」
「勿論俺もだ!」


お互いハートを飛ばしながら、お帰りなさいのキスを玄関開けっぱなしでする。
途中まで一緒に帰って来たであろうサボが「ちゃんと閉めろよ」と言って静かに閉めてくれた。


「ん、……っは、エー、…ス…!」


長いキスに名前は少々酸欠気味。呼吸をさせる暇さえ与えてくれない。
逃げようとしても腰にはエースの太い腕でがっちり抑えつけられているので絶対に逃げられない。
胸を叩くと少し離れてくれたが、すぐにまたキスをしてくる。


「んーーー!」


引き離そうとしても無駄で、そのたびにエースが押し倒してきて、結局そのまま床に押し倒してしまった。


「苦しいよ」
「俺の愛が?」
「重たいし」
「俺の愛が?」
「……うん、好き」
「俺も!」


またキスをして十分イチャイチャしたあと、ようやくリビングへと向かう。
何も言わないでいると服をそのまま脱ぎっぱなしにするので、ハンガーを持って脱ぐのを待つ。


「今日も疲れたー!マルコの奴容赦ねェし、イゾウも怖ェし、サボはうるせェし」
「……」
「ああ、でも今日オヤジに褒められたんだぜ!その調子で頑張れってよ!」
「…」
「…名前?聞いてっか?」
「え!?あ、ゴメン。ちょっと…」
「ちょっと?」


したくないネクタイを我慢して締め、着たくないスーツを着ている。
これを脱ぐときがエースにとってちょっとした幸せのときで、名前にとってもそうだ。
男性がネクタイを緩める姿は女性のほとんが好きだと思う。それを大好きなエースがやるのだから見惚れないわけがない。
緩める姿も、シャツを脱ぐ姿も。とても色っぽく見え、いつ見ても顔を赤くしてしまい、心臓も高鳴る。


「何だよ。何考えてたんだ?」
「……エース、格好いいなって…」
「バッ…!そ、そんなん俺だってお前のこと可愛いと思ってる…」
「え?!」


エースと名前は近所でもバカップル上等夫婦として有名であった。


「何着ても似合うけど、スーツも似合うよね。私エースのスーツ姿好きだよ!」
「あー…じゃあスーツプレイでもすっか」
「……今度ね」
「ダメ、今日!」
「今日はダメ!」
「何でだよ!」
「スーツ汚れちゃうでしょ!」
「名前は俺のスーツ姿好きなんだろ?」
「好きだけど…」


脱いだスーツをハンガーにかけながら俯く名前を覗きこむ。
一度目が合ったのにふいっと反らされてしまい、ムッとしたので逃がさないよう抱きしめる。
胸の中で暴れる名前に笑って頬や額にキスをするとすぐに大人しくなり、笑って背中に手を回す。


「でも本当に今日はダメ」
「……」
「お願い、エース」
「解った。じゃあ週末な!」
「うん!」


恥ずかしそうに頷く名前にまたキスをして、長かったお着替えも終了。
キッチンに向かい、「腹減った」と名前に甘える。
エースがお腹を空かせているのはいつもなので、すぐ食べれるように準備はできていた。
あとは温めるだけなのだが、今日は早めに作ってしまい、温まるのに時間がかかってしまう。


「名前ー…」
「わっ」
「腹減った」
「ごめんね、もうちょっと待って」
「んー…」


座っていたエースがいつの間にか近くまで来て、名前の背中に抱きつく。
顎を名前の肩に乗せ、くるくるとかき混ぜている手元を覗きながら涎が垂れないよう気をつける。


「食べていいか?」
「ダメ!もうちょっと待って」
「でももう無理」
「え?う、わっ…!」


エースが言うのは名前が温めているご飯ではなく、名前自身のことだった。
ゴソゴソと名前の服に手を突っ込みながら、首にキスをする。
今さっきのスーツプレイからスイッチが入ってしまったため、お腹は空いているが名前を触りたくて触りたくてたまらない。
名前がエースの腕を叩くが、意味をなしていない。


「エース!私本当に怒るよ!」
「怒っても怖くねェし」
「じゃあもう今日はお風呂一緒に入らないし、一緒に寝ない!ソファで一人で寝て下さい」
「ごめんなさい」


まさぐる手を止め、すぐに名前から離れて頭を下げる。
「もー…」と困ったように眉をしかめる名前だが、嫌なわけではない。
頑張って働いてきたんだからしっかりご飯を食べてほしい。
しかし、しゅん…。と沈んだエースを見て、名前の良心が少し痛む。


「……嘘だよ。ちゃんと抱きしめて寝てね?」
「名前ッ…!当たり前だろ!やだって言っても抱きしめて寝てやる!」


鬼になりきれない甘い嫁と、嫁しか見えない旦那。
今日もケンカすることなく一日が過ぎていった。







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