20万打部屋 | ナノ

その愛、強力につき

アキは人懐っこい性格で、底なしに明るくて、誰よりも頑張って俺達に追い付こうとする。
それが可愛いと思うのは俺達全員がアキを妹だと思っているから。
だけど、俺のこの気持ちはそれとは違うものだと感じ始めた。

アキがマルコと一緒にいることなんて珍しい光景じゃないのに、気にして何度も何度も見てしまう。
アキが嬉しそうにマルコに抱きついたり、手を繋いだり、甘えたりするのを見ると胸が燃えるように熱くなる。
きっとマルコが独占してるから嫉妬してるんだ。って思ってたけど、挨拶する仲間にまで嫉妬している自分がいた。

あんな子供に嫉妬するなんて認めたくねェ。


「エースさん、大丈夫ですか?起きてますか?」
「ん?ああ、大丈夫だ」


でも、アキが俺の隣にいて笑ってると、気持ちが落ちつく。
笑って大丈夫って言うと安心したように息をつき、笑って釣り竿に目を落とした。
昨日約束したアキとの釣り。別に珍しいことじゃないのに、昨日寝ることができなかった。
チラリとアキに視線を向けると、「釣れないなー…」とぼやきながら目を伏せる。


「釣れねェな…」
「なんかエースさんと釣りしたらいっつも釣れない気がします」
「んだよそれ」
「だってマルコさんと釣りしたときはいっつも大漁だし、サッチさんと釣りしたときは大体大物がかかりますもん」


釣り竿を引き、上がった糸を引き寄せて溜息を吐いた。
きっとブラックジョークのつもりで言ったんだろうが、胸の奥がチリッと燃えた気がした。
アキの隣にいたら落ちついてたのに、火がじわじわと広がって、頭にも回る。


「あー、そうかよ。じゃあ俺じゃなくマルコと釣りすればいいだろ」


俺も釣り竿を引きあげ、甲板に投げ捨てその場から立ち去る。
すっげェムカつく。いや、ムカつくって言葉じゃ治まらないほど腹立つ。
別に大物がかかってほしいわけじゃねェ(いや、かかってほしいが)、ただ俺はアキと一緒に並んで、一緒に時間を過ごしたかっただけだ。
他の誰にも邪魔されねェで、アキと二人っきりで……。


「エースさんっ!」


慌てて追いかけてきたアキが俺の前に立ち塞がる。
泣きそうな顔で、少しだけ身体を震わせながら謝っているけど、何で俺が怒ったか解りもしねェで謝ってほしくねェ。
鈍感なアキに余計苛立った俺は、近づいてきたアキの肩を押して拒絶した。
簡単に尻もちをついたアキは呆気にとられた表情で俺を見上げている。

何で、そんな目で見てくんだよ…!
俺はただアキに笑ってほしいだけなんだ。一緒に笑って、バカやって、……。
ああ、こんなことしたからか。俺が悪いよな。でも元はと言えばお前が悪いんだろ?

言葉にすることなくアキを睨みつけてやれば、目に溜めていた涙をポロリと流した。
そうだ。いつだってアキは俺の前だと困った顔や、泣きそうな顔をする。
マルコに見せる顔は滅多にしねェ。


「何でッ…!」
「エー、スさん…?」


何で笑ってくれねェんだよ。俺にももっと頼ってくれよ。何だってするから。
アキのいい兄でいたい。だけどそれ以上に俺を好きになってほしい。
家族としてでも構わねェ。ただ、アキの「好き」を俺にも欲しい。欲張るなら俺を愛してほしい。


「アキ」


俺もしゃがんでアキの両肩に手を添える。
アキはまだ泣いてたけど、きっと俺も泣きそうな顔してる。
不安そうな目と視線が合い、怖くなってアキの肩に顔を埋めた。


「アキッ…」
「…」


何で何も答えてくれねェんだ。
いつもみたいに「エースさん」って呼んでくれよ。
「ごめんなさい」って謝ってくれよ。そしたらすぐに許すから。


「アキ、胸が苦しい…」


ごめんなアキ。俺、お前のことが好きすぎておかしくなってる。
そのまま小さなアキを抱きしめ、力を込める。
壊さないように力をいれたつもりなのに、苦しそうな声を出すアキ。だけど我慢できねェ。


「胸が苦しくて、壊れてしまいそうだ」


きっといつかアキに殺されてしまうんじゃねェかって思うときがある。
でも俺はこんなとこで死ぬわけにも、アキに殺されるわけにもいかねェ。
そしたらある考えが浮かんできちまうんだ。


「アキを壊してしまいそう」


壊しちまえば全てが解決するような気がした。
勿論壊すなんてこと絶対しねェ。
それほどアキを愛してるって気づいてくれたか?
俺がお前を妹じゃなく、女として見てることに気づいてくれたか?
なァほら言ってくれよ。どんな答えでも、お前が出す答えに文句つけねェから。


「エース、さん…」


震える声を聞き、少しだけ抱きしめる力を弱める。でもまだ逃がしてやらねェ。


「俺は、……」
「……ああ」
「俺も、―――」


その言葉で答えを知る。
最初の言葉を言おうと開いた口に自分の唇を重ねて、簡単に舌をいれることができた。
驚いて離れようとするけど、気持ちが同じなら別に構わねェだろ?
弱めた腕にまた力をいれ、背筋をなぞると悲鳴がもれる。
この悲鳴は好きだな。しかも俺が出させたって思うと興奮する。


「俺の愛で焦がしてやるから覚悟しとけよ」


ペロリとアキの唇と舐め、絶対に逃がさないと自分自身に誓った。





るりさんからリクエスト頂きました。




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