計画的な討伐2 イライライライラ。 時計の秒針のように止まらないそれと、貧乏揺すり。 いつものように目を瞑ればさっさと寝れるはずなのに、今日は寝れねェ。 だからと言って目を開けたくねェ。絶対に。 あのクソエロコックが…。 心の中で悪態をついてやると、またイライラする。 名前にもマユゲにもムカつく。うぜェ。 「知らん」って言っても、今日会ったばかりの男と何で一緒に寝れんだ?アイツは頭がおかしいんじゃねェのか? しかもアイツ相手にだぞ。見てみろ、鼻の下伸ばしてキメェ顔になってやがる。気づけよ。 「ッチ…」 思わず目を開けると、目の前にそのキメェ顔をしたエロコックと、熟睡してる名前がうつった。 おい、近すぎだろ。顔近づけな。近づける意味がねェつーの。 それから腰に手を回して抱きしめるな。んなことしなくても寝れる。名前も違和感あんだろうが、起きろ。 つーか何で俺がこんなにイライラしなくちゃいけねェんだよ。おかしいだろ。 「んっ…」 居心地悪そうに眉をしかめ、体勢を変える名前。 横向きになり、アイツの胸に顔を擦り寄せたのを見て、さらにイライラする。 「機嫌悪そうだな」 「あァ!?」 目だけ開き、薄く笑いながら話しかけてきたクソ野郎。 「テメェが知るかって言ったんだろ」 「うっせェな。黙ってろよ」 「イヤなら最初っから止めろよ」 「おいしつけェぞ」 「ま、どうでもいいがな。名前ちゃん柔らかくて気持ちいー」 「ぶった斬るぞテメェ…」 また鼻の下伸ばして名前の頭を頬ずりしやがる。 刀に手を伸ばし、本気で斬ってやろうかと力を入れると名前がまた動き出した。 「……サンジ、さん…?」 「あ、おはよう名前ちゃん。ごめんね、起こしちゃった?」 「いえ…。サンジさんこそ寝てますか?邪魔なら離れますよ?」 「ぜーんぜん!寧ろ名前ちゃんが気持ちよすぎて朝まで寝そうだよ」 「私も気持ちいいです」 至近距離で笑いあう二人を見て、一気に疲れが襲ってきた。 考えるのも面倒くせェ。 「あ…ゾロさんどこ行くんですか?」 「…」 「ゾロさん?」 「便所だろ。ほら、夜中までもうちょっとあるから寝よう」 「お前といると疲れんだよ」 「…え?」 「おい!」 この街に来てからもやもやしたり、イライラしたり…。 何も見たくねェからその場から離れると、「ゾロさん!」と焦ったような声で名前を呼ばれる。 うるせェうるせェ。俺ァ静かなとこで寝たいんだ。 二人が見えない位置に移動し、今度こそ寝てやろうと目を瞑る。 すると二人の悲鳴が聞こえ、すぐ何かが川に落ちる音が聞こえた。 面倒くせェと思いながらも、身体が勝手に動き、音が聞こえたほうへと向かう。 ほら見ろ。俺から離れるからそうなんだ。 どうなったかは大体解る。転んで川に落ちたんだろ。 「ごめんなさいサンジさん!大丈夫ですか?」 「大丈夫。それより名前ちゃんはケガしてない?」 「私は大丈夫です」 クソ野郎が名前を庇うように抱きしめ、落ちたんだろう。 名前が押し倒した体勢のまま川の中でお互いを心配していた。 それにまたイライラして、俺も川へと降りる。 「何してんだよバカかテメェは!」 「わわっ!」 腕を掴んでアイツから引き離す。 浅瀬だからよかったとか、そんなことどうでもいい。 岸まで連れて行き、手を離すとバランスを崩した名前が地面に転ぶ。 「こんな大きな音たてたらバレんだろうが!気をつけろ!」 「ごめんなさい…」 「おい、八つ当たりしてんじゃねェよ」 「あァ?!」 「元はテメェが名前ちゃんから離れるからだろ」 「テメェは黙ってろ。それとも一生黙らせてやろうか?」 「できるもんならな」 上等だ。誰だかわかんねェぐらい細かく斬ってやる。 抜刀する体勢を整える俺と、蹴る体勢を整えるクソ野郎。 緊迫した空気が流れる中、何かが近づいてくる足音が聞こえた。 「おう、兄ちゃん達こんなとこで何してんだァ?」 「あ、あの女です!ほら、例の噂の…」 ほらみろ、やっぱバレてんじゃねェか。 数人の男を連れた手配書の男。 ニヤニヤとした顔がムカつくので早々にぶった斬ってやる。邪魔だ。 周りにいた男はクソ野郎が蹴り飛ばし、また静かになる。 これで集中して戦えるってなもんだ。 「ゾロさん」 「んだよ。邪魔すんじゃねェ」 「あの、ケンカは止めて下さい。サンジさんは悪くないんです」 服を引っ張り、俯いたまま謝ってくる名前。 だけどアイツを庇おうとするのがムカつくので、振りほどく。 「私が、ゾロさんから離れたのがいけないんです」 「解ってんなら最初から離れんな」 「でもきっかけを作ったのはテメェだろうが。矛盾してんだよテメェは」 「いいんです。私が気をつけなくちゃいけないことなんですから。ほら、お目当ての人倒したんだし帰りましょうよ」 苦笑いをしながら、なんとかこの場を静めようとする。 気絶している男に近づき、「ゾロさーん、手伝って下さい」と呼ぶので、刀を収め男を担ぐ。 そうやって最初から俺を頼ってればいいんだ。 「これで暫くの間はお金に困りませんね」 この笑い方、どっかで見た気がすんだよな…。 目を見て言わない名前に違和感を感じながら、街へ戻って行った。 ( ← | → ) ▽ topへ |