破戒僧パロ | ナノ

聞きたいことがあります


「ダルい…」


途中起きることなく朝を迎えた。
起きると身体が重たく、そして寒気がおさまらない。
「風邪」の単語が出てきたけど、考えないようにする。だって考えるもっとダルくなるんだもん…。
身なりを整え、ゾロさんを起こそうとして、すぐに手を引っ込める。
どうしよう。また怒るかな…。
寝るごろは機嫌悪くなかったから大丈夫だと思う。でも怖い。


「昨日疲れたし…」


ゆっくり寝てもらおう。どうせやることないもんね。
そう思って引っ込めた手をルフィさんに伸ばす。
寝相は悪いけど、布団からは出ていないルフィさん。器用だ…。


「ルフィさん、朝ですよ」
「んあァ?」


軽く揺するとすぐに目を開き、私をボーっと見てくる。
もう一度声をかけると今度はゆっくり起き上がり、「よっ!」と爽やかな挨拶をしてきた。
お昼でも真夜中でも朝でも変わらないルフィさんのテンション。
少しぐらいゾロさんに分けてほしいな。


「そう言えばさ、服濡れてんだろ?」
「あ、もう乾いてますよ」
「昨日言おうとしたんだけど、俺いつの間にか寝ちまってよォ。俺の服貸してやる」


大丈夫ですよ。と断わる暇もなく布団から飛び起き、押し入れを漁り出す。
しわくちゃになった甚平を広げ、んー…と首を捻りながら私に合わせてみる。


「俺にはちっせェけど、名前にはピッタリだな!ほら」
「いいんですか?」
「勿論!昨日の夜言えなくてゴメンな」


便所で着替えてこいよ。と言われたので、甘えさせてもらうことにした。
甚平を着るの初めて…。
着物に比べて薄っぺらく、動きやすい。だけど気をつけないと胸元がはだけるし、袖から胸が見えることも…。


「ガキみてェだな!」


甚平に着せられた私を見て、ルフィさんが笑う。
つられて私も笑うとその笑い声でゾロさんがようやく目覚め、寝ぼけ眼で私とルフィさんを交互に見る。
するとまた不機嫌なオーラを漂わし、私は笑うのを止めた。


「おう、ゾロ。やっと目ェ覚めたか」
「ああ」
「そろそろウソップが来るし、飯でも食いに行こうぜ」
「そうだな」
「……どうした?機嫌悪ィぞ?」
「何でもねェよ」


私を一度も見ることなく部屋を出ていく。
ルフィさんが不思議そうにゾロさんを見て、「寝不足か?」と私に聞いてきたけど、私にも全く解らない。
苦笑いしながら着物を荷物につめ、いつでも出れる準備を整える。
ルフィさんもさっさと、私の目の前で着替え、草履を履いてゾロさんを待つ。
……目の前で着替え始めたときはどうしようかと思った…。


「ルフィさん、ご飯食べに行くってどこへですか?」
「ん?そりゃあサンジのとこだ!アイツが作る飯はうめェからな!」
「でも今日お休みだって言ってませんでしたっけ?」
「ああ、休みだ。でもサンジはいるぞ。仕込みとかなんとか言っていっつも朝だけいるんだ」
「そうなんですか…。生粋の料理人なんですね」
「おう!そう言やァ名前って昔っから旅してんだろ?なんか面白ェもんとかあったか?」
「面白いものですか?そうですね…。村に伝わる面白いお話ならありますよ」
「何だよそれ!」


まるで子供のように目を光らせ、前のめりになるルフィさん。
隣に座り、いつものように話を語ると、場面場面に合わせて表情を変える。
「純粋だな」と思いながら、その顔を見るのはイヤじゃなく、私まで何だか楽しくなってきた。


「おい、何してんだ。早く行くぞ」
「あ、はい。ルフィさん、行きましょう」
「なァなァ!その続きは!?」


準備を終わらせていたゾロさんがさっさと外に出て行くので、慌てて荷物を背負い後を追う。
ルフィさんは続きが気になるみたいで、私の隣を歩きながら「で?で?!」と催促してくる。
なので歩きながらまた続きを話してあげる。
ゾロさんの機嫌悪いみたいだし、ルフィさんと話してたほうがいいよね。

話が終わるころに丁度良く風車に到着した。
「閉店」と木の札が扉にかかっていたが、ルフィさんはそんなの関係なく扉を開け、「サンジー!飯ー!」と入って行く。
中にはルフィさんが言ってた通り、サンジさんがいて、私を見るなり変わらない笑顔で「おはよう、名前ちゃん」と挨拶された。


「おはようございます、サンジさん。昨晩をお世話になりました」
「いいのいいの!それより朝ご飯食べる?準備するからここ座りなよ」
「名前!早くこっち来いって!」


サンジさんは調理場近くの席を指し、ルフィさんは自分の隣の椅子を叩いて私を待つ。
二人とも指す場所が違うから、どっちに座ろうか悩む。


「お前の席はここだろ」


と、手を引かれゾロさんの隣に座らせられた。
調理場から離れ、ルフィさんとも少し遠い席。

お、驚いた…。
一緒の机に座ることはあっても、隣に座ることなんて今までなかった。
いつも隣を歩いてるけど、座るのは何だか恥ずかしい。
黙ったままゾロさんを見ると、「何だよ」と睨まれる。(本人は至って真面目な顔のつもり何だろう)


「と、隣に座るなんて初めてですね…」
「そうだっけか?」
「そうですよ…。……えっと、お水もらってきますね」


隣に座るのがこんなにも恥ずかしいもんだとは思ってもみなかったよ…!
居心地悪く、すぐに立ち上がってお水をもらう。
ついでにルフィさんの分もついで、渡すと「ありがとな!」とまた爽やかな笑顔でお礼を言われ、ホッとする。癒される…。
ゾロさんと自分のものを持って、隣に座るか前に座るかで悩んで身体が止まった。


「何してんだ」
「どっちに座ろうか悩んでて…」
「ハァ?」
「あ、サンジさん手伝ってきますね!」


ダメ、恥ずかしすぎる!
席から離れ、サンジさんの近くへと向かった。
「手伝うことありますか?」って聞くと、「大丈夫」とだけ答える。
でもこのまま戻るのは何だかイヤだ。しかも視線がすっごく痛いし…。
そんな私の心を読んでくれたのか、サンジさんが「じゃあこれ切ってくれる?」と中へ案内してくれた。


「大丈夫?」
「はい。これでも料理はできるんですよ」
「そりゃあ助かるよ」


なんたって何年も旅を続けてるからね。料理は嫌でもうまくなりますよ!
そう笑ってみせると、サンジさんも笑って任せてくれた。
ルフィさんが机の向こうから身を乗り出し、「うまそォ!」と涎を垂らしてきたので、切った野菜を冗談半分で「はい」とあげると、指ごと食べられてしまった!


「テメッ、ルフィ!」
「あー…やっぱ野菜はダメだ。力はいんねェ…。サンジー、肉まだかよ」
「ちょっとは大人しく待ってろクソゴム!」


店内に鳴り響くルフィさんの腹の虫は、生き物かのように鳴り続ける。
だから私も真面目になって野菜を切ったり、サンジさんの言われた通りに盛りつけたり、色々手伝った。
一品できあがるのにそんなに時間がかからないけど、ルフィさんの食べるペースが早すぎてゾロさんに持って行けない!
なんとかバレないよう、ご飯とお魚とみそ汁の典型的な朝ご飯を持って行くと、やっぱり不機嫌な顔をしたゾロさんが待っていた。


「……遅くなってごめんなさい」
「お前客だろ?何で手伝ってんだ?」
「サンジさんお休みだって言うのに私たちの為に作ってくれるから…」
「…」


何も言わないまま箸に手を伸ばし、食べ始める。
前に座り、お水をいっぱい飲んで小さく溜息をつく。

何だろう。凄く疲れる。身体重たいし、頭ボーってするし。
ゾロさんはずっと機嫌悪いし、もうやだな…。
何かしたんだろうか。そればっか考えて、胸もすっごく苦しくなる。

机に伏して、目を瞑ると頭がグラグラと揺れる。
あ、何だか眠たいや。ちょっと寝ていいかな。いいよね。


「名前?」


今ゾロさんに呼ばれた?
おかしいな、近くにいるのに声が凄く遠い。
ダメ、眠たい。ダルい。しんどい。寒い。


「名前!」


ごめんなさい、少しだけ寝かせて下さい。
そしたら何でずっと怒ってるのか聞かせて下さいね。
どんな答えでもちゃんと受け止めますから。それが最後の別れだとしても。







お前の席はここだろ?と手を引かれ隣に座らせられる
彼に強引にされる5題(確かに恋だった様より)




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