盃兄弟 | ナノ

いつもの時間を大切に


「おー…さすがマルコさん!」
「お安いご用だい」


戦争のような夕食も終わり、後片付けもサボお兄ちゃんと一緒に終わらせる。
エースお兄ちゃんはバイトに向かい、ルフィはマルコさんに勉強を見てもらっていた。
だから私も見てほしいと、夕方にしていた課題をマルコさんに見てもらう。
あんなに難しかったのにあっという間に終わり、しかも説明が分かりやすいからしっかり理解できた!


「名前も見てもらったのか」
「うん。クロコダイル先生の課題だからやらないと…」
「あの人まだいたのか!」
「アイツまだいたのかい」
「マルコさんも知ってるんですか?」
「いや、ただの顔見知り程度だよい」
「そうなんですか?」


サボお兄ちゃんが出してくれたコーヒーを三人で飲みながら、クロコダイル先生の話で盛り上がる。
まさかこんな共通点があるなんて…。


「名前!風呂入ろうぜ!」


そこへ宿題も終わり、アニメも見終わったルフィが抱きついてきた。
コーヒー持ってなくてよかった…。


「……この年でまだ一緒に入ってんのかい?」
「ち、違います!ルフィが毎日誘ってくるだけなんです!」
「ダメだぞルフィ。名前は年頃の女の子なんだからな」
「年頃ってなんだ?うまいのか?」
「中学三年生でこれは疎(うと)いな」
「兄二人を見てるはずなんですけどね…」
「名前ー、風呂入るぞー!」
「ダメ、恥ずかしい」
「俺は恥ずかしくない!」
「私は恥ずかしいの!」
「ルフィ、ワガママ言うなって。それに俺だって一緒に入って、「お背中流しましょうか?」って言われたい」
「サボお兄ちゃんはちょっと黙ってて。大体一緒に入れるほど広くないでしょ?」
「密着感がいいよな」
「サボお兄ちゃん、いい加減にしないと殴るよ」


ごめんごめん!と謝るサボお兄ちゃんを無視し、駄々をこねるルフィを説得する。
これも毎日のやりとりで、毎回「今日一緒に寝る」で手を打ってもらう。
するとマルコさんが「なァ」と喋り出した。


「部屋一つしかないのに、どうやって寝てんだい?ここで寝てんかい?」
「四人で雑魚寝してるんです」
「冬はいいけど夏は厳しいよね…。それなのにルフィはベッタリくっついてくるし」
「だって名前気持ちいーんだもん!」
「ああ、それ解る。今日エースいねェから名前の隣は俺だな」
「仲いいねェ…」


マルコさんの言葉に笑うことしかできなかった。
気持ち悪いとか思わないのかな?
私は一緒に寝たり、お風呂に入ろうとするのを気持ち悪いなんて思わない。
だけど友達だった子に「気持ち悪い」って言われた。
思い出して胸が痛くなる。
結局、エースお兄ちゃんと仲がよかった私に嫉妬してそんなことを言ったらしいが、それ以来敏感になってしまった。
私が何を言われようとどうでもいいが、兄弟を言われるのイヤ。怖くてたまらない。


「名前、マルコさん帰るって」
「え?あ、もう帰られるんですか?」
「ここんところくに寝てなくてな…。ご馳走さま」
「大したものじゃなくてすみません。また来てください」
「じゃーなオッサン!今度飯奢ってくれ!」
「「ルフィ!」」


サボお兄ちゃんと声を合わせて怒ると、マルコさんは笑って隣に帰って行った。
ルフィはお風呂に向かい、私は残りの課題を終わらせる。
サボお兄ちゃんは持ち帰った仕事を手早く片付け、タバコを吸うためベランダへ出て行く。
タバコは高いからあんまり吸いたくないらしいけど、昔の癖で時々吸いたくなるらしい。
昔は酷かったからな。そんなことを思いながら、今度は家計簿とにらめっこ。
どこか削れるとこないかな…。


「あがったぞー!名前、頭!」
「ん」


床に座り、背中を向ける。
またびしゃびしゃのままあがって…。


「ルフィ、ちゃんと拭いてからあがらないと」
「シャツ着てねェから濡れてねェぞ?」
「シャツも風邪引くから着て。でも床濡れてる」
「シシシ!」
「もう…」


可愛すぎて怒れないじゃない。
丁度夜のアニメが始まったからそのままの状態で一緒に見る。
最近のアニメは凄いなぁ…。


「ルフィ、邪魔」
「わっ。サボ、何すんだ!」
「名前、俺も拭いてくれ」


いつの間にかお風呂に入り、あがったサボお兄ちゃんがルフィを押し退けタッチ交代。
だから…なんでびしゃびしゃのまま出てくるのかな…。
苦笑いしながら出されたタオルで頭を拭いてあげる。
ルフィは口をとがらせたが、サボお兄ちゃんの隣で珍しくアニメの続きを見るのに戻る。
アニメ見てるときは大人しいよね。


「気持ちいい?」
「気持ちいい」
「今日もご苦労様です」
「名前とルフィのためだ」
「ありがとう。でもサボお兄ちゃんももっと自由にしていいんだよ?」


だってまだ若いんだもん。やりたいことだってあると思う。
買いたいものだってるでしょ?って言うと、小さく笑った。


「それを言うなら名前もだろ?それに迷惑かけたんだ。これぐらいして当然さ」


中学時代の二人は凄まじく荒れていた。
だけど私とルフィには変わらず優しかったから、迷惑なんて感じてない。


「平気だよ」
「…ん。俺も平気」


にしし!と笑うサボお兄ちゃん。
普段は一番大人っぽいけど、笑うと少し幼さが残る。
エースお兄ちゃんとは違った格好よさがあるよね。


「名前ありがと。風呂入ってこいよ」
「あ、うん」


タオルを取って乱暴に頭を拭く。そのまま首に巻いて、またコーヒーをいれた。
ルフィはまだアニメを見ている。今のうち!

さっさと脱いで、さっさと湯船に浸かる。
サボお兄ちゃんはしっかり浸かるタイプで、エースお兄ちゃんとルフィはシャワーで終わらせるタイプ。
兄弟でも見事分かれるよね。


「名前ー、俺明日体操服がいるぞー。どこやったんだ?」
「ルフィ、いきなり開けないでよ!」
「あ、わりィわりィ」
「あとから出してあげる」
「おう!」
「………何してるの?」
「見てる」
「見ないで」
「なァ、なんで名前はそんなに恥ずかしがるんだ?」
「何でって言われても…」
「名前の身体綺麗だし見られてもいいだろ?」
「サボお兄ちゃん助けて!」
「ルフィ!」
「いでェ!」


ほんと、どうやったらあんな真っ直ぐな子に育ったんだろ…。



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