お肉は大切に 「はい、もしもし」 『名前ーーー!』 「ルフィ?どうしたの?」 『ケガしたー!いてェ!」 「え!?だ、大丈夫?どこケガしたの?」 『膝…。迎えに来てくれ』 「うん!学校でいい?」 『おう!』 「行くまで大人しくしててね!」 夕食の準備も終わり、学校の課題をしていた。 これがなかなか難しくて、全然ペンが進まない。 でもこれの担当クロコダイル先生だし絶対にやらないと怒られる…。 そこへエースお兄ちゃんの電話が鳴り響く。 家電話がないからエースお兄ちゃんとサボお兄ちゃんの電話を共同で使うことになっているので、画面を確認して出る。 ルフィからだったので出ると、ケガをしたと涙声で叫ぶので慌てて家から飛び出す。 ルフィがこんなに騒ぐなんて…!というかケガするなんて! 想像するケガはとても酷いもので、とにかく怖かった。 「ルフィーー!」 「あ、来た!名前ー!」 「こんにちは名前ちゃん!今日もなんて可愛いらしいんだ!」 「クソマユゲが…」 「んだとクソマリモ!」 「……あれ?」 母校ともあって迷うことなく保健室に辿り着く。 色んな生徒に変な目で見られたけど、今の私にはなんともない!ルフィ大丈夫かな! 保健室を開けるとルフィと見慣れた顔の二人。またサンジ君とゾロ君に迷惑かけたのかな? 息を整えてると、いつものように飛びついてくるルフィ。 支えることができなくてそのまま後ろに倒れ、頭を打つ。痛い…! 「おいコラルフィ!名前ちゃんに何しやがる!羨まし――じゃなくて変われ!」 「じゃねェだろうが。おいルフィ、降りろ」 「名前ー、腹減って動けねェよォ…」 二人の言葉を無視して、グリグリと頬を擦り寄せる可愛いルフィ。 可愛いのは解るけどちょっと待って。お姉ちゃん頭打ってそれどころじゃないの…。 「大丈夫かい、名前ちゃん。手を」 「ありがとう、サンジ君。ところでルフィ、ケガは?」 「ケガなら大したことねェよ。それより腹減って動けねェんだと」 「動いたから腹減った!」 「そう…。ケガが大したことなくて安心したよ」 「ったく、それぐらいでいちいち名前を呼ぶなっつーの」 「ごめんねゾロ君。またうちの弟が迷惑かけちゃって…」 「いやいや、気にしないでよ名前ちゃん」 「俺に言ってんだろうが。お前はちょっと黙ってろエロガッパ」 「んだと!?」 「でもルフィ、慌てて来たから食べ物持ってないよ?」 「名前がいたら帰れる!一緒に帰ろうぜ!」 あ、今キュンってなった。 なんなのこの可愛い子はッ!もうほんと天使!可愛すぎ! 「うん、じゃあ帰ろうか」 「おう!」 「名前ちゃん、俺も途中まで一緒にしていい?」 「勿論。あ、ゾロ君も途中まで一緒だよね?帰ろ?」 「ああ」 左にルフィ。右にサンジ君。ゾロ君はちょっと離れてゆっくり後ろからついてくる。 ルフィが今日活躍したことを自慢気に話して、それに突っ込みを入れるサンジ君。 サンジ君もルフィ同様助っ人したんだって。二人とも運動神経いいよね。 ゾロ君は剣道部で、今日は珍しく休み。だけど自主練の為に残ってて、帰る途中ルフィに捕まったらしい。 文句をいいつつ面倒を見てくれる二人はとても優しいよね。いい友達を持って幸せ者だ! 「じゃあなゾロ、サンジ!」 「またね、ゾロ君、サンジ君」 「じゃあなルフィ。それから名前ちゃん!また一緒に料理作ろうね!」 「そのときはまた宜しくお願いします!」 「じゃあなルフィ。名前、早食いしないようしっかり注意しとけよ」 「あ、ゾロテメェ!」 「ルフィ…」 「しょうがねェだろ!いい匂いすんだもん!」 「可愛く言ってもダメ。今日せっかくお肉買ったのに」 「え、マジ!?肉!?」 「約束破った罰でルフィにはなしです」 「えー!」 二人に手を振って、家へ向かう。 そろそろサボお兄ちゃんも帰ってくる時間帯かな? 可愛く「ごめんなさい」って言うルフィを許して、玄関を開けるとやっぱりサボお兄ちゃんが帰っていた。 サボお兄ちゃんは私とルフィを見るなり、ホッと息をつく。どうしたのかな? 「お帰りなさい、サボお兄ちゃん」 「お帰りサボ!」 「ただいま。ルフィを迎えに行ってたのか?」 今さっきのことを話すと、「そうか」とゆっくりイスに座る。 そしてすぐにルフィを見て、一発殴った。 不意打ちだったため逃げることができなかったルフィ。 涙目になって頭を押さえ、サボお兄ちゃんを睨むけど、サボお兄ちゃんの怖い顔にすぐ私の後ろに隠れた。 「それぐらいのことでいちいち名前を呼ぶな!」 「だって本当に腹減って動けなかったんだぞ!」 「お前はすぐそうやって名前に甘えて…!俺だって可愛い名前に迎えに来てほしい!」 「サボお兄ちゃん、脱線してるよ」 「あ、わりィ。次くだらないことで名前を呼んだら一週間肉なしな」 「えー!?」 「あと名前。慌ててたとは言え、鍵はちゃんと閉めろ。んで書き置きしてくれ」 「ごめんなさい」 「ん」 ぐしゃぐしゃと優しく撫でてくれるサボお兄ちゃん。 帰って来てビックリしたんだろうな…。若干汗が滲んでいた。 今度からは気をつけないと! 「ルフィは制服着替えろ。名前は夕食準備。俺は風呂洗ってくるから」 「「はーい」」 下ごしらえはできているから、あとは煮込むだけ。今日は皆大好きすき焼き!…ほぼ野菜だけど。 美味しいものを作ろうと思ったけど、材料を見てこれしか思い浮かばなかった。 マルコさん、美味しいものじゃなくてごめんなさい。凝ってなくてごめんなさい。 「名前名前」 「どうしたの、ルフィ」 「俺の肉って書いといてくれ」 「フフッ、残念ながら書けません」 「じゃあエースに内緒でのけといてくれ!」 「それもダメ。あ、ちゃんと野菜食べてね」 「えー…野菜はいらねェ」 「怒るよ?」 「それはダメだ!」 背中にベッタリひっつき、手元を覗いてくる。 つい最近まで身長一緒だったのに、今ではすっかり抜かされてしまった。 身体も男の子らしくなってきたし、筋肉もついてきた。 だけど、昔は可愛かったのにな。なんて思うことはない。今も十分可愛いもん。 だから、腹減った。と連呼するので、お肉を別で焼いてあげる。 ルフィの美味しそうに食べる顔が好き。可愛い。こっちまで幸せになる! 「あ、ルフィ!また名前の邪魔して!」 「ち、ちげェぞ!肉なんて食ってねェからな!」 「ルフィ!」 「名前、ルフィ甘やかしただろ」 「……そんなことないよ」 「二人揃ってウソつくの下手だな」 サボお兄ちゃんの分まで焼いて、なんとか許してもらった。 エースお兄ちゃん、ごめんなさい。 「そろそろかな…。ルフィ、マルコさん呼んできてくれる?」 「マルコも来んのか?」 「うん、疲れてるみたいだし呼んだの」 「そう言えば最近見てなかったな」 「忙しいみたい。エースお兄ちゃん、ご飯だよー」 エプロンを脱いで、寝ているエースお兄ちゃんを揺するけど、やっぱり起きない。 これからバイトなんだしちゃんと食べてもらわないと。 「お肉なくなっちゃうよー」 「…うー」 「すき焼きですよー」 「あー…」 「ルフィに取られちゃいますよー」 「…がー…」 「名前、最終兵器」 「うん」 呆れるサボお兄ちゃんからお許しを頂いたので、久しぶりにやりましょうか。 一度咳払いをし、喉の調子を整える。…ちょっと恥ずかしい。 耳元に口を近づけ、いつもは出さない声を頑張って出す。 「エースお兄ちゃん、早く起きて私にキスして?」 「名前が望むならいくらでもするぜ!」 「バーカ。誰がやらすかよ」 勢いよく起きたエースお兄ちゃん。 そのまま抱きついてきて、キスされるかと思ったら、サボお兄ちゃんに顔面を殴られ、引き離される。 口喧嘩する二人を笑って見ながら、準備に戻るとルフィが帰って来た。 マルコさんの顔色は若干よくなっていて、少し安心する。 「いらっしゃいマルコさん。どうぞ座って下さい」 「悪いな」 「うおー、うまそォー!」 「ルフィ、先に食べたら怒るからね。サボお兄ちゃん、エースお兄ちゃん、ご飯食べよ」 「覚えてろよサボ!」 「うっせェ。俺に勝てたことねェくせに」 「マルコさん来てるんだから止めて。ごめんなさい、マルコさん」 「いやいや、いつものことだろい?」 「お隣さんに言われちゃった」 サボお兄ちゃんがご飯をよそって、私が配る。 あーあー…ルフィがそろそろ限界。今日も夕食は戦争だ。 「じゃあ頂きます」 サボお兄ちゃんの声とともに、やっぱり戦争が始まる。 特にエースお兄ちゃんとルフィの戦いが酷い。お肉の取り合いばっか…。 だけどサボお兄ちゃんも負けてない。隙をついてはお肉を取り、そして野菜もちゃんと取る。 マルコさんもそんな感じで、バランスよく食べていて驚いた。ここまでこの戦争に慣れた隣人さん初めて。 「名前!肉がなくなった!」 「もう!?ちょっと待ってね」 口いっぱいにお肉を頬張りながらルフィに催促されるので、残りのお肉を全部投入。 煮込むまでの時間、二人はジーっと大人しく待っている。野菜を食べる気はないらしい。 「ほら名前。俺の肉やるから」 「俺のもやるよい」 この時間が唯一ゆっくり食べれる時間。 戦争に参加できない私は野菜ばかり食べていた。 そしたらサボお兄ちゃんと、マルコさんがお肉を分けてくれる。 ルフィが文句言ってたけど、エースお兄ちゃんが怒って黙らせる。 「ありがとうございます」 久しぶりに食べたお肉は、いつも以上に美味しかった。 そしてまた戦争が始まり、今日も騒がしい夜が更けていくのだった。 ( ← | → ) ▽ topへ |