盃兄弟 | ナノ

コミュニケーションを大切に


「名前ちゃん、せっかくだし遊びに行こうよ!」
「ごめんね、今から買い物行かないといけないから無理なの!」


午前授業も終わり、昼食を取ることなく下校時間を向かえる。
友達が遊びに行こうと誘ってくれたけどそれを断り、荷物を急いで鞄につめる。
本当は遊びに行きたい。
だけどご飯を作るのと全般の家事は私の担当。
サボお兄ちゃんもエースお兄ちゃんも頑張って働いてるんだから、私だけが甘えるわけにはいかない。
ルフィはまだ中学生だし、今が大事な受験生。
面倒を見てくれてるのはサンジ君かナミちゃんだろうね。


「あ、いた!」


走って校門に向かうと、既にエースお兄ちゃんがいた。
エースお兄ちゃんは絶対に遅刻しないんだよね。
サボお兄ちゃんのときはよくするみたいだけど…。


「……また囲まれてる」


校門の少し手前で一度立ち止まり、呼吸を整える。
鞄を背負い直してその様子を見ていた。
エースお兄ちゃんとこうやって待ち合わせするたび、たくさんの女の子に囲まれている。
確かにエースお兄ちゃんは格好いい。ブラコンとかそう言うのナシにして格好いいと思う。
でもいい気はしない。
エースお兄ちゃんはいい人だから女の子を邪険に扱ったり、無視したりしない。
自慢の優しいお兄ちゃんだけど、もやもやして楽しくない。


「お、名前!」
「エースお兄ちゃん…」
「あれ俺の妹なんだ。可愛いだろ!」


重たい足で近づくと、回りにいた女の子たちが興味なさそうに私を見てくる。
見たことないからきっと三年生か二年生の先輩たちだ…。怖いな。


「これからデートすんだぜ!」
「エースお兄ちゃん、行こ」
「おぉ、そうだな。じゃあな!」


エースお兄ちゃんは変わらない笑顔で先輩たちに手を振る。
私はなるべく顔を見せないように素早くその場を離れる。
また何か言われるかな…。メルアド教えてって言われても教えたくないな…。


「どうした名前。気分わりィのか?」
「ううん、何でもないよ」
「そっか。もし疲れたら兄ちゃんに言えよ。おんぶしてやる!」
「この年でおんぶは恥ずかしいよ」
「俺は恥ずかしくない!」


優しいお兄ちゃんの気遣いに自然と笑顔になれた。
せっかくエースお兄ちゃんと買い物に来たんだし、忘れよう!


「時間もたっぷりあるし、ちょっと服とか見ようぜ」
「うん!」


エースお兄ちゃんは、大学生になってから凄くお洒落になった。
サボお兄ちゃんもお洒落だけど、エースお兄ちゃんとはジャンル?が違う。
双子だから身長も体重も骨格も近いのに、服の好みが異なるからシェアできないって言ってた。
どっちかって言ったら、ルフィとのほうが好み似てるよね。


「名前ー、欲しい服があったら兄ちゃん買ってやるぞ」
「んー、大丈夫」
「また我慢ばっかして!金のことは心配しなくていいって言ってるだろ」
「だってまだ着れる服あるもん。それよりエースお兄ちゃんの服選んであげる」
「え、マジ?名前が選んでくれるなら毎日着るぞ!」
「それはさすがに止めて」


エースお兄ちゃんはどんな服が似合うかなー。
モノクロの大人しい系で揃えてもいいけど、派手なものも似合う。
ちょっと子供っぽいのでも似合うから困った…。
暑いしカジュアル系?あ、でもエースお兄ちゃんは暑いの平気だから気にしなくていいしな…。


「エースお兄ちゃんって格好いいよね」
「は?」
「格好いいから色んな服似合いすぎ!」


どれを合わせても似合う!もういっそのことモデルになればいいじゃん!ってぐらい格好いい。
モデルになったら今よりもっと会う時間が少なくなるから困るけど…。
また新しい服を取って、合わせようとすると腕を掴まれる。
どうしたの?って顔をあげると、真面目な顔で私を見ていた。


「名前、結婚しよう」
「ダメです」
「また振られた!」
「また振っちゃった」
「何だよ。俺のこと格好いいと思うなら結婚してもいいだろ!」
「そうだね。でも今の生活と大して変わらないよ?」
「……それもそうだな!」


服を合わせながら他愛もない会話を続ける。
うん、これでいいかな?
エースお兄ちゃん、夏は得意だけど冬が苦手だからあったかそうな服を選んであげた。
そろそろ秋だね。なんて会話をしながらレジをすませ、お店を出る。
荷物が増えたから、持ってもらってた鞄を持とうとしたけど、返してくれない。
俺が隣にいる限り名前は荷物を持たなくていい!ってキッパリ言われたけど、私だってエースお兄ちゃんばっかに負担増やしたくない。
そう言っても返してくれなかったので甘えることにした。


「今日のご飯は何しようかな…」
「名前、肉ッ!」
「朝ルフィにも言われた。安かったらお肉にしよう」
「名前の飯は何でもうまいけどな」
「ありがとうございます。あ、マルコさんも誘っていいかな」
「別に構やしねェが…。つーか最近来てなかったな」
「うん…。今日の朝挨拶したけど、結構やつれた…」
「じゃあやっぱ肉だろ!肉!」
「………うん、じゃあお肉にしよう!」
「よっしゃあ!」


カートを引きながら走り出す。
格好いいんだけど、ああいったとこは子供っぽくて可愛いなって思ってしまう。
……お兄ちゃん相手に「可愛い」って思うのはおかしいかな?


「何してんだ名前。早く早く!」
「はーい」


ま、いいや。
それよりお金大丈夫かな。給料日までまだまだ…。
今月分の食費貰ってるから、お金足りないってサボお兄ちゃんに言えない。
もっと上手にやりくりしないと!
私のお昼ご飯分をルフィに回して、少し離れた地区にあるお店に行って…。


「名前、何ボーッとしてんだ?荷物まとめたし帰ろうぜ」
「あ、ごめん!」
「考え事か?悩みなら兄ちゃんに言え!」
「悩みじゃないよ。試験のこと思いだして考えてただけ」
「……勉強はあんまり得意じゃねェからな…」


たくさんの荷物を持ってるって言うのに、平気な顔をして家まで帰宅。
いつもより早い時間に帰って来れたから久しぶりにゆっくり夕食の準備ができる。
エースお兄ちゃんはちょっと寝てからバイトに行くらしい。
布団を敷いてあげるとすぐに倒れ、寝た。疲れているのにありがとうございます。
制服から動きやすい服に着替え、朝干した洗濯物を取り込んで、たたむ。
あ、マルコさん誘わないと。いるかな?
服をおさめ、静かに家を出るとタイミングよくマルコさんと遭遇した。


「こんにちは、マルコさん」
「ああ。今日は珍しく早いんだな」
「はい、午前授業なんです。あ、今日の晩ご飯よかったらいかがですか?」
「いいのかい?」
「勿論です!マルコさんすっごく疲れてるみたいですし、エースお兄ちゃんも是非って」
「それじゃあ甘えさせてもらおうか。まともな飯食ってねェから嬉しいよい」
「じゃあまた夜に」


頭を下げ、部屋に戻る。
うん、やっぱり疲れてる顔してる。小説家って大変なんだな…。
じゃあ失敗しないよう美味しいもの作らないと!
気合いを入れてエプロンを着る。よし、頑張ろう!



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