盃兄弟 | ナノ

朝の準備は大切に


「サボお兄ちゃん、おはよう」
「おはよう、名前」


この家で一番の早起きはサボお兄ちゃんです。
いくらその前の日に遅く帰って来ても、絶対一番最初に起きてます。
日曜日ぐらいゆっくり休んだら?って言っても、絶対に起きます。
だから少し早くに起きて、朝の準備をしていたら、驚いた顔をされました。
どうやら寝起きの顔を見られたくないらしい。


「飯はもうすぐできるから、洗濯物頼んでいいか?」
「うん」


眠たい目をこすりながら、昨日の夜に出された洗濯物を洗濯機に入れる。
私とルフィは制服しかないから楽。あとサボお兄ちゃんも。
一番多いがエースお兄ちゃん。まぁ大学生は私服だもんね。
それでも少ないほうだと思う。

すぐに終わって、部屋に戻るともうご飯ができていた。
一緒に手伝って、全部の支度を終わらせる。

サボお兄ちゃんは面倒なことを全部してくれる。
例えば、冬に洗濯や洗い物など…とにかく優しい!


「おいエース、ルフィ。飯だぞ」
「飯ー!」


部屋が一つしかないから四人で雑魚寝。
サボお兄ちゃんが足で二人を蹴ると、ルフィは飛び起き、エースお兄ちゃんはまだ夢の中。
溜息を吐くサボお兄ちゃん。二人でエースお兄ちゃんを背負い、椅子に座らせればあとは簡単、勝手に食べてくれる。


「じゃあいただきます」
「いただきます」
「うめェうめェ!」
「こらルフィ、こぼすんじゃない」
「だってうめェんだもんよ!」
「エースお兄ちゃんもこぼれてるよ。ほら、ちゃんと食べて」
「名前、食べさせてやることないぞ。エースはほっといて自分が食べろ」
「名前食わねェのか?じゃあ俺がもらうぞ!」
「だ、ダメ!」


それでもパンの半分を持っていかれた…。
サボお兄ちゃんが自分のを私にくれようとしたけど、それを断る。
サボお兄ちゃんは社会人なんだから私よりしっかり食べないとね!


「じゃあ今日の報告。俺はいつも通り。19時か20時前には帰ってこれると思う」
「俺は助っ人頼まれたから遅くなる!でも早く飯食いてェから18時までには帰ってくるぞ」
「私は午前中で授業終わるから、一番早いよ。買い物してくるね」
「名前!俺肉!肉が食いてェ!」
「ルフィはいっつもだね。安かったら買ってくるよ」
「で、エースは?」
「んがっ!」


机の下でエースお兄ちゃんの脛(すね)を蹴るサボお兄ちゃん。
するとしばらくしてゆっくり目を開ける。
ほんと朝に弱いんだから…。ルフィも弱いけど、ご飯さえできれば起きるのにね。


「俺は………」
「寝るなよ」
「いっ…!てェな!」
「寝るからだろ。いいから今日の報告。またバイトか?」
「いや…、あー……、あれだ、午前まで大学。夜からまたバイト」
「じゃあお昼空いてる?」
「名前のためなら何があろうと空ける」
「黙れシスコン」
「黙れシスコン」
「アッハッハッハ!両方だよなー!」
「「ルフィもだ!」」
「おう!俺が一番名前のこと好きだからな!」


それをきっかけに、いつものように言い争いを始める兄二人と弟一人。
愛されてるのは嬉しいんだけど、朝からは止めてほしいかな…。
ほら、せっかく新しいとこ決まったんだしさ…。またすぐに追い出されたくないじゃん?


「サボお兄ちゃん、エースお兄ちゃん、ルフィ。時間危ないよ」
「っと、やべ。名前、悪いがあと任せていいか?」
「うん、大丈夫」
「ごめんな!じゃあ行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
「サボー、ちゃんと働けよー」
「働けよー」
「うるせェ」
「ルフィ、これお弁当」
「おお!うんまそ〜〜!食っていいか!?」
「ダメ!えっと、これが二時間目に食べるやつで、これがお昼。そしてこっちがお昼過ぎに食べるのね。全部一気に食べたらダメだからね!」
「えー…」
「じゃあルフィは夜ご飯抜き!」
「俺我慢する!」
「さすがルフィ!超可愛い!」


ギューっと抱きしめて、ルフィも学校に急がせる。
教科書は全部学校の机に入ってるみたいだし、忘れ物をすることはない。
……いっつも学校でお世話になってるゾロ君やサンジ君、いつもいつもすみません。


「名前ー、俺には?」
「え、何が?」
「ハグ」
「あとからね。それより片づけるから早く食べて」
「最近名前が冷たくてお兄ちゃん泣いちゃう!」


わんわんと泣き真似をするエースお兄ちゃん。
仕方ないからギュッとしてあげると、笑顔で抱き返してくれた。


「あ、お昼一緒に買い物行こ。眠たかったらいいんだけど…」
「いや、行く。名前とのデートだからな」


食器を一緒にさげ、私は洗濯物を干しに出る。
今度の洗濯機はベランダに置かれていて、そのまま干せるから楽だ。

中に戻るとエースお兄ちゃんが食器を洗っていたので、私はゴミ出しの準備を始める。
うん、他にはゴミなかったよね?
この地区のゴミ出しルールは昨日大家さんから聞いたからこれで大丈夫なはず。


「俺が出すから玄関に置いといてくれ」
「あ、うん。お願いします」


玄関の外まで持って出ると、丁度お隣に住むマルコさんと出くわした。
疲れた顔のマルコさん。昨日も徹夜だったのかな?なのに朝から騒いじゃった…。


「おはようございます、マルコさん。朝からうるさくてすみません」
「いや、今帰って来た…」
「そうなんですか?お疲れのようですね」
「ああ…」


珍しくそれ以上喋ることなく、部屋に戻って行く。
だ、大丈夫かな…。本当に辛そうな顔してた。
今度何か美味しいもの作ろう。いっつもお世話になってるし、それぐらいしないと!


「名前、出かけんぞ」
「あ、ちょっと待って!」


鞄を持って、戸締りの確認してエースお兄ちゃんと一緒に出る。
鍵もしっかり閉めた!


「終わったら校門の前で待ってっから」
「うん、すぐ行く!」


私達が住む部屋は二階の一番奥。
うるさいから角部屋がいいってなって、ここが丁度空いていた。
狭いけど家賃も安いし、お風呂もトイレもついてる。
高校、中学、そしてサボお兄ちゃんの会社から近いこともあってすぐにここに決まった。
一番遠いエースお兄ちゃんの大学だけど、「バイクあるから大丈夫」って言ってた。
……バイク買えるほどお金ないはずなんだけどな…。


「いいか、変な男に出会ったらすぐ逃げろよ」
「大丈夫。私より可愛い子たくさんいるから」
「でも気をつけろ!」
「もう…。解りました、気をつけます」
「つーか名前も携帯持てよ。買ってやるから」
「んー……まだ大丈夫だよ」
「それでもお兄ちゃんが心配なの!」
「心配しすぎだよ。それに携帯高いし…。携帯にお金かけるぐらいなら食費に回さないと…」
「……。解った。じゃあ何かあったらルフィのとこかサボのとこに行け」
「うん!」
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい。行ってきます」
「おう!」


階段を降り、門の前でいくつか会話をして別れた。
さて、今日もしっかり勉強しましょうか。



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