盃兄弟 | ナノ

不思議な体験は大切に?その2


!注意!
エースサンド。エースが二人います。





「……はあ…」


さすがに二度目となると溜息しか出てこなかった。
「またか」と頭を抱えながら、二人いるエースお兄ちゃんを交互に見ると、一人は「な、何だよ…」と顔を赤らめ、視線を四方へ泳がす。
ああ、ラフな恰好をしているエースお兄ちゃんは照れ屋なのか。
じゃあもう一人の上半身裸なエースお兄ちゃんはどんな風になっているんだろうか。
お願いだからサボお兄ちゃんみたいな腹黒いキャラは勘弁してほしい。
そう願いをこめてジッと見つめると、にこりと笑みを浮かべて、


「抱きしめてやろうか?」


両手を広げた。
いつもと変わらないエースお兄ちゃんにほっとひと安心する。


「にしても名前はほんと可愛いなー!」


と思ったのは一瞬で、その言葉のあとすぐ私に近づいて頬にキスをし、腕を腰に回してグイッとエースお兄ちゃんに引き寄せられた。
足が一瞬浮いて、「わっ」と声をもらしたけど、エースお兄ちゃんはお構いなしに頬や首にキスを落とし続ける。


「お、おい止めろよ…!」
「何だよ、俺のくせにこんなこともできねェのか?じゃあ黙ってそこで見てろ」
「でっ、できねェことねェけど…!名前嫌がってんだろ…」
「嫌がってんのか?」
「…ちょっと恥ずかしいかな」
「照れ屋な名前も可愛いー!」
「おい!」


ぎゅうぎゅうと私を抱きしめる半裸のエースお兄ちゃん。
たくましい身体に押し潰され、後ろに倒れそうになるけど、ちゃんと支えてくれている。
苦しいけど…、これは嫌いじゃないかな。サボお兄ちゃんのときよりマシだ。


「……あれ?」


しかし、何かがおかしい。
不思議に思って抱きついてるエースお兄ちゃんを見ると、ニィ!と笑っていた。


「名前、なかなか可愛い下着つけてんな」
「なっ…!」


いつの間にかブラのフックを外され、ズルリと服の下から取り出された。
何その早業!て言うかそういうのは器用なんだね!
ブラを床に投げ捨て、また服の下に手を入れようとした瞬間、


「おい俺!名前にセクハラすんじゃねェ!」
「いってェ…!何しやがる!」
「名前にセクハラすんなって言ってんだ!名前から離れろこの変態!」
「…自分に言ってるみたいで傷つかねェか?」
「それ以上にお前の行動見てたら恥ずかしくて死ぬ!」


ラフな恰好のエースお兄ちゃんに救出され、半裸のエースお兄ちゃんから遠ざける。
床に落ちていたブラを真っ赤な顔で拾い、見ないよう横を向いて「ほら」と手渡され、受けとって後ろに隠す。
普段でさえも見れない優しいエースお兄ちゃんの行動に思わず目が潤んでしまった。
なんて優しいお兄ちゃんなんだっ…。そして照れ屋なエースお兄ちゃんはちょっと可愛いぞ!


「あーあ、せっかく今ノーブラなのになー…」
「エースお兄ちゃんは黙ってて」
「そいつも俺だろー。贔屓すんなよ」


口を尖らせながら文句を言ってくる半裸のエースお兄ちゃんをさらに睨みつける。
いつもなら「わ、悪かったよ…」とすぐに謝ってくるのに、半裸のエースお兄ちゃんは口端をゆっくりあげ、一歩近づく。
感じたことのない雰囲気に、ラフな恰好をしたエースお兄ちゃんにしがみつくと、


「大丈夫。名前の貞操は俺が守る!」


と抱きしめ返してくれた。


「なんだよ、俺がまるで悪もんじゃねェか」
「そんな顔して近づけば誰でも怖がるだろ!」
「つーかお前なに我慢してんだ?普段から名前を抱きしめてー。とか、ヤりてー。とか考えてんじゃん。もっと素直に生きようぜ」
「お前みたいになりたくねェよ!名前の前であんまそういうこと言うな!」
「照れ屋な名前は可愛いが、照れ屋な自分は可愛くねェな…」
「本能に忠実な俺なんて見たくなかったぜ!」
「名前ー、ヤろーぜ!」
「ちょ、近づくな!触るな!どっか行け!」


ラフな恰好をしたエースお兄ちゃんから手を離せば確実に犯される!と感じた私は、半裸のエースお兄ちゃんに引っ張られようが、何されようが絶対に手を離さなかった。
ラフな恰好をしたエースお兄ちゃんは可愛いけど、半裸のエースお兄ちゃんは無駄に色気があるうえ、ちょっと怖いので早くいなくなってほしいと思いました。





次回、真面目?マルコVS強引マルコに続く!…かも。



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